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 広げたシャツについている乳首と目が合ってしまった。
 数秒見つめてから――目を離して振る。
 ハンガーにかけて皺を伸ばす。
 先生の趣味はわかりやすいようで難解だと思う。
「ジェノスー」
「はい」
 窓ガラス越しの呼び声に返事をする。
 カーテンの隙間に先生がいた。
「昼飯素麺でいいか」
「もちろんです」
 これで三日連続だ。
 片付けも楽だし、食べるのも楽だし、何よりまだ大量にある。
 先生は頷いて背を向けた。
 キッチンへ行ったのだろう。
 足元のカゴに入った洗濯物を見る。
 三日分をまとめて洗うのでそこそこの量ではある。
 先生のことだからお湯を沸かしてから尋ねてきたのだろうし、干し終わる前に素麺は茹で上がりそうな気がした。
 パシン
 乾いた空気は音をよく響かせた。
 空気が乾燥してきた今の時分でもこの時間は少し暑い。
 ただ湿度は低いので、カーテンを閉めてさえいれば部屋の中は意外と涼しい。
 ただ、薄暗いが。
 先生お気に入りのスイカ柄下着を最後に干して、ベランダから部屋へ戻るために窓を開けた。
 じゃぶじゃぶと水音がする。
 素麺を洗っているようで、どうやら間に合ったということはわかった。
 カーテンを手で押して部屋の中に入ると、キングがいた。
 いつの間に来たのか、気づかなかった。
 先生の隣で素麺を洗っている。
「来ていたのか」
「うん。ゲーム持ってきたらなんか茹で過ぎたから入れって言われて」
「茹で過ぎ?」
「考え事してたら10把くらい茹でたって言ってたよ」
「ああ。うっかりしてなあ」
「なるほど」
 カゴを部屋の隅に置く。
 キングが素麺が入ったガラス製の器を机に置きながら、
「ねえこの部屋、暗くない?」
「昼間なのに部屋の電気つけたら勿体無いだろ」
「カーテン閉めてるのに・・・」
「問題ない」
 着席した三人が各々に素麺をよそって口へ運ぶ。
 先生はキングと新しいゲームの話をしている。
 自分もやってみればあの会話に入れるだろうか。
 あまり興味が持てないのは事実だ。
 カーテンの隙間から漏れた光が机の上を一直線に通っている。
 光は自分と、先生とキングの間に伸びていた。
 素麺の器を通ってこちらとあちらを分けているように見える。
 なんだか非常に腹が立った。
「ご馳走様。片付けたら帰るよ」
「いーよやるから。またな」
 そう?いいの?そう言いながらキングが出て行った。
 先生が背を押して一緒に出て、すぐに帰ってくる。
「買物、行きますか?」
「んー。もう少し涼しくなったらな」
 少し顔を赤くして暑そうな先生が、伸びをした。
 全ての食器を持ちキッチンへ運ぶ。
 居間を振り返ると、先生は枕を抱きかかえて壁にもたれかかっている。
 目を閉じているので、食器を洗うのは後にした。
 なるべく音を立てないように。
 先生がいる反対側の壁に寄りかかる。
 やはり光は部屋の真ん中を通り、先生と俺の間に線を引く。
 その線をまたいではいけない気がして光源へ目を向けると、太陽の光が直接目に入った。
 常人とは違うのでなんてことはない。
 ただ、
「先生、誤作動を感知したので、博士のところへ行ってきます」
「? おお。大丈夫か?」
「はい。夕方のセールまでには戻ります」
「おう」
 カーテンを思い切り開け、窓から出た。
 先生の声が聞こえたが、潤滑油が誤作動を起こした顔を見られることに抵抗があったので、そのまま飛んだ。
 おかしいと思われたかもしれない。が、振り返る暇は無かった。
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