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 ボーっと空を見ていたら雲が一筋流れていった。
 あと5分もしたら買物に出かけなければセールに間に合わないので、そろそろ着替えようかと腰を上げようとしたところで、流れていた雲がそのまま降って来た。
 自分に向かってくる雲を眺めながら、アレはもしかして隕石だったのかと思う。
 それにしてはおかしな軌道変更をしたなとも思いつつ。
 何が降ってくるのかと眼を凝らす。
 なんとなく見覚えのある顔が付いているような気がした。
「なあジェノスー」
 横で洗濯物の皺を伸ばしているマメなサイボーグに、あと数秒で到達するだろうその雲を指し示しながら、
「あれ、見覚えあるんだけどお前知ってる?」
 と尋ねると、洗濯物から顔を出したジェノスが、
「ああ、あれは」
 風圧でバサバサと飛びそうになる洗濯物を押さえながら、
「フブキの姉の」
 砂埃に顔をしかめつつ、もしかしたら洗いなおそうとか考えていそうな表情で、
「ランキング2位のー」
「―ちょっと、名前くらい覚えなさいよね!」
「タツマキです」
 干していたタオルについた砂を振り払い、洗濯カゴに戻した。
 洗い直すことにしたらしい。
「よく知らないって知ってたな」
「聞こえてるわよ、あなたたちの声くらい」
「へえ。じゃ」
 ベランダのスライドドアを閉める。
 呆然とした表情の少女が、一瞬後に怒りの表情を浮かべる。
「あなたね!私が」
「あーこれからセールなんだわ。後でな、後」
「先生、あと3分です」
「え、マジで?じゃあこのままでいいや行くぞジェノス」
「しかしタツマキが」
「あー・・・。あ!」
 ベランダのドアを開け、ふるふるとしている少女に手を伸ばした。
「ちょっと、ついでだからお前も来い」
「何よ!」
「いいから来いって!必要なんだよ、お前が」
「・・・・!?フ、フン。フブキが来るまで待たせてもらうツモリだったし、いいわよついでー」
 少女の腰の辺りを掴んで、家の中を横切って玄関を出る。
 後から施錠を済ませたジェノスもついてきた。
「今日のセールはお一人様二点です、先生」
「おう」
 全速力で走る。
 ジェノスが見えなくなるが道は知っているはずなので気にしない。
 小脇に抱えた少女が気になりはしたが、フブキの姉なら平気だろうと思いそのまま突っ走った。
「着いた」
 SALEのチラシが壁に貼られた店の入口の前で急停車する。
 抱えていた小さな体を下ろすと、それはトトトトと街路樹へ近寄り、蹲った。
 ちょっとだけ悪いことしたかなと思いつつ、店のドアを開ける。
「えっと・・・、行くけど」
「行きなさいよ!何よアンタ人のことを荷物みたいに!」
 振り返った顔が激怒を浮かべている気もする。
 が、もう時間がないので、
「何だよ、そんなに嫌なら」
「置いてけばいいでしょ!」
「いやお前も来ないと2個損するだろ。だから抱えて行くけど」
「・・・・」
 ワナワナと肩が震え、それと同じ調子で背後の木がビキビキと音を立てた。
 台風でも来る予報が出てただろうか。
「しょうがねえなあ。オヤツは100円までだぞ」
 ブフォッと風が吹いた。
 同時にジェノスが追いつく。
「先生、もう時間です」
「おう」
「タツマキは」
「帰ったんじゃね?オヤツ100円じゃ足りなかったらしい」
「そうですか」
 セールを告げるベルの音がした。
 おばちゃんの集団にまぎれて卵とティッシュと白菜を手に入れ、レジへ向かう。
 途中、先を歩くジェノスの後姿越しに菓子コーナーが見える。
「なあ、ジェノス」
「はい」
「こどもが好きなお菓子ってなんだ?」
「・・・・甘いもの、とかでしょうか」
「甘いもの」
「チョコレートとか」
「ああ、なるほどな」
 歩きながら、棚にあった小さなチョコレートの詰め合わせを手に取り、白菜が二玉入ったカゴの隙間に押し込んだ。
 顔見知りになったレジのおばちゃんに別れを告げてゆっくりと家へ戻る道すがら、空を見た。
 飛行機雲がまた空に線を引いている。
 ちょうどその線から下が赤く染まりかけていて、上はほんのりと暗い。
 なかなかいい景色なので眺めながら歩いていると、ジェノスに危ないのではないかと注意された。
「おー」
 生返事になってるなとは思いつつ、気にしない。
 結局家に帰り着いても、その線が落ちてくることはなかった。
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