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 合宿に来たのか旅行に来たのかわかりゃしない。
 あちこちに枕が飛び散っていて、しかもカバーがちゃんとついているものなんてひとつもない。
 それどころか八人部屋に敷かれた八組の布団も、まともにシーツが掛けられているものは残っていなかった。
 枕投げをしたにしても酷い有様だ。
「お前ら、今日の練習試合くらいじゃ体力が有り余ってるようだな?あ?」
 並んで正座している若者たち八人は多少なりとも反省した顔をしている。
(でも多少じゃ困るんだよなあ)
 何しろ先ほどこの宿舎の責任者から、明日もこの様子なら明後日は泊めないと遠まわしに言われたのだ。
 こんな観光地で飛び込みでこの人数を泊められる旅館なんてものは期待するだけ無駄である。
 なので何とか支配人以下ホテルの従業員たちの機嫌をこれ以上損ねないようにしなければならない。
 そのためには多少なりともキツイ灸を据えねばならないのだ、が。
(合宿中は練習試合を組みまくってるからな。変なところで体力使わせたくねえし)
 何か、いい案はないものか。
 ぼろぼろのジャージ(恐らく中学時代のもの)を着た少年が唇を尖らせたのが見えた。
 引っ張られたのかぼろぼろな上にかなりよれている。
「とりあえずだな・・・布団を直せ」
 ウイッスと答えてばらばらに八人が腰を上げる。
 枕を集める者、枕カバーを探す者、布団シーツを直す三人はなかなか手際がいい。
 そして売り言葉に買い言葉で持っていた枕を投げつけたジャージの少年を引っぱたいた。
「どうせお前がこの惨状の原因なんだろ?猿野」
「違いますって!この焦げ犬が」
「うるせえ。お前だけ別室で寝ろ」
「ちょっ、廊下は嫌ですよ!」
「馬鹿野郎一般の客もいるんだお前みたいな馬鹿の鼾が響き渡ったんじゃ大迷惑だろうが」
「アンタの鼾だって相当だろ!」
「いいからさっさと布団を直して出ろ馬鹿が」
 悪態をつく一人と、無言の七人が布団を直し終えたのを確認してから部屋のドアを開けた。
 顎で示すと渋々と言った様子で猿野がスリッパを履く。
「明日は六時に起きて飯食って移動だ。さっさと寝ろよ」
 ぶつぶつ言いながら部屋を出た猿野に続いて部屋を出る。
 ドアを閉めると猿野は言った。
「俺はアンタの部屋?」
「決まってんだろ」
「明日も練習試合なんだろ」
「お前を使うとはまだ言ってネェ」
「んなっ」
 噛み付いてきそうな顔が面白いと感じる。
 見ていて飽きないがたまにうざったい。
「さっさと行け。俺の部屋は五階だぞ」
「オッサンの癖に!」
「オッサンは若いんだぞ。お前もわかってるだろ」
「ムキー!」







「ねえ監督さっきの気づいてないと思う?」
「けん制で言ったんじゃないんっスか?」
「いえ、あれは素が出てしかもそれに気づいていないと私は見ました」
「・・・・とりあえず、ブッコロ」
「・・・・・・」
「猿野くんはそんなに鼾をかくんっスかね?」
「前合宿行ったときはどちらかというと寝相が酷かった気がするよ」
「みんなアイツより先に寝たというか沈没したからな・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「あのヒゲただじゃおかねえYo」


 布団に包まった七人が鬱憤を翌日の練習試合で発散したことは言うまでもない。
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