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「やあ、盟友。散歩かい?」
「・・・そう見えるか?」
「締め出されたようにも見えるよ」
 舌打ちをして、オーフェンは頭を掻いた。星の光に照らされた相手はいつもと同じように涼やかな顔でスーツを着ている。
「寝るときくらい着替えりゃいいんじゃね?」
「――君も」
「言うな」
 黒いシャツに黒いズボン、そして足元だけはその辺にあったサンダルを履いてきたのだろう出で立ちのオーフェンの横に並ぶ男は、オーフェンに笑みを向けて面倒そうな視線を返された。
 しばらく無言のまま連れ添って歩く。何処へ行くか尋ねない相手は気が楽だが、それはこの男ではないときの話だ。世界の創造主は世界のことを知っていてもその世界に住むもののことは不思議と知らない。いや、興味がないのか。
 村から離れ、森の途中の小川を上流へ向かう。その先に出現した石碑と湖は静かに佇み、時折湖面を撫でた風が頬に当たった。
「こんな日はν~R(1/n^2-1/m^2)が見たいな」
「にゅ・・・は?」
「ν~R(1/n^2-1/m^2)だ」
「何のことだ」
「以前の世界に」
「待て、以前っていうのはなんだ?神話の前か?」
「そうともいう。盟友が神話というその前だ。私がいた世界だ」
「・・・」
「ぼんやりとしか覚えていないが。美しかったのだ、ν~R(1/n^2-1/m^2)は」
「だから・・・いや、いい。お前に聞いたってわからないものはわからないな」
「空が光り美しいのだ、盟友よ」
「・・・は?」
 オーフェンは空を見上げた。たまに星が瞬く空は静かにそこにある。既に深夜の空には星の色以外には何も無い。
「このミズガルズソルムルにはないことが私は悲しかった。どれだけ光を作り出そうとも」
 彼が視線で促したので、非常に警戒しながらもオーフェンは掌に小さな光の玉を生み出した。男がそれに触れる前に光は消えた。
「白いだろう」
「ああ、白いな」
「世界は光で出来ているが何故私の世界は白しか生み出せなかったのか――」
「・・・」
「私は不思議でならない」
「自分で作っておいて思い通りにならないことなんてざらにあるだろ」
 意外そうな顔で男が見てきたので、オーフェンは嘆息した。
「それが普通だろ。クリーオウなんて自分の腹から出てきた子供でさえ言うこと聞かないって言ってやがんだ」
 わかったのか、わからないままなのか、表情が抜け落ちた顔がオーフェンを見た。
(初めて会ったときもこんな顔をしていたような気がするな)
 ろくなことを考えていない顔といえばいいのか、人間の一般常識から外れた考えをしている男の――
(今は人間じゃねえんだもんな)
 昔は人間だったのかと考える。ウォーカーと呼ばれるからには人間だった、のだろう。そこまでをこの男から聞き出し理解するにはだいぶ時間がかかったが。
「お前の美しさの基準は、色なのか?」
「なるほど。だから光を全部吸収する黒にとても興味を引かれるのか」
「――?」
 男は小さく頷きながら、かがくが無い世界はより複雑だ、と呟いた。
 オーフェンは話を合わせたり理解することを諦めて湖面を見続けた。時折風が揺らす湖面の波紋は空からの光を揺らしている。
「俺はお前が何かしようとしやがっても首に縄つけてワンと言わせてやる覚悟だけはしているつもりだ」
「我が盟友よ、唐突過ぎないか」
「いや、何か身の危険を感じたから牽制したつもりなだけだ」
「そうか」
 しばらく静かに湖面を眺めた。オーフェンが踵を返すと、男も後をついて来た。自らの魔術を使えない男は、自宅へ帰ることも困難だろう。しばらく考え、オーフェンは後ろの男を肩越し見やった。
「居間のソファで寝るか?」
 笑んだ真の魔王が一瞬ただの人間に見えて、オーフェンは自分の疲れを自覚した。
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