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 同質で真逆の存在と言うものが意外と近くにあり、彼はその存在を認めてからもしばらく考えていた。
 海を渡り、およそ一年ぶりにその真逆の存在を視界に入れてからも、まだ考え続けた。
 ただ、魔術が使えなくとも特に不便がなかった日常が、海を渡ることで一転してからと言うもの、考えに雑念が入るようになった。
 それでも体に染み付いた動きは彼を驚異から守りもしたし、真逆の存在を驚かせもした。
 そして何を考えていたか忘れた頃、魔術が成功し、魔術を取り戻した。
 その魔術というのが、魔王の背後から現れた異形に放った咄嗟のものだったので、彼自身の驚きはしばし魔王と目を合わせてしまったほどだ。
「なにも考えてないヤツが考え出すと魔術が使えなくなるんだろうな」
 そう言った魔王に彼がなんのことか尋ねると、「経験談だ」と言う答えしか返って来なかった。
 ある日、魔王の髪が伸びてきたと感じた彼は、魔王にそのまま伸ばせば自分とお揃いになるだろうと告げた。翌日、魔王の髪は今まで以上に短くなっていた。
 またある日、未完成の魔王術の反動で負傷した魔王を治しながら、犯した。
 朦朧とした魔王はそれでもさまざまな逃げるすべがあったろうに、抵抗らしい抵抗はしなかった。彼はそれが不思議だった。
「お前が泣いてたから驚いてそれどころじゃなかった」
 魔王はそう漏らした。彼は泣いた記憶がなかったので、よくわからないが魔王の気の迷いなのだろうと思った。
 しばらくしたある日、魔王の元弟子が現れた。魔王の弟子とは、彼から見るとどういう存在なのか。彼はまた考えた。考えたが、1分と経たずに考えることをやめた。それほど興味をひかれなかったからだ。
 ただ、魔王の元弟子だけあると言えばいいのか、だからこそ弟子にしたのか、魔術の威力は桁違いのようだった。まだ荒さが目立ち、希に魔王が構成に口を出していた。
 彼はただ見ていた。
 そのうち、彼にふと疑問が湧いた。他愛のない疑問だ。目の前の二人は、魔王と魔王の弟子。では自分と魔王はどのような間になるのか。クラスメイトか。しっくり来ない自身の答えが不満で、彼は魔王に尋ねた。
「教室で一緒に過ごした時間よりここの数ヶ月の方が長いんじゃねえの?まあ、なんだ。仲間ってやつだろ」
 仲間。彼は口の中で呟いた。
 ストンと胸に何かが落ちてきた。
 同時に、同質で真逆の存在と言うものがよくわかった。足を組み居眠りをする魔王の前で、彼は自分が何をすべきかようやく思い付いた。
 魔王と呼ばれる男と同質で真逆の存在である自分は魔王の影のような、そして人間なのだと。
 長いこと考えていた疑問の答えを魔王に伝えると、魔王は「またよくわからねえこと考えやがって。だいたい俺も人間だぞ」と言った。
 彼は少し首をかしげて、魔王が人間か人間でないか考えようとしたその時、足元を通りすぎた小さい動物を捕まえた。
 小さい動物の名前を呼びながら駆け寄って来た腹の大きな女性に、片手で持ち上げたその小動物を渡す。女性は礼を言って奥の部屋へと戻っていった。
 彼は考えた。
 魔王の影になるならばこどもを知ることも必要なのではないかと。妻はいるのだから。
「なあ、エド」
 呼ばれて、彼は振り向いた。眠気が無くなったのか、いつの間にか出した小さなナイフで木片を彫っている。
「いまさら言うのもなんだが、頼りにしてる」
 一瞬目を合わせ、すぐに木片に戻した魔王の耳がうっすらと赤い。先程の思い付きを強固足る願望へ変化させながら、彼は魔王に頷いた。
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