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 見つかることが即ゲームオーバーを意味する鬼ごっこは最早かくれんぼに近くて、彼は鬼から距離を取った後隠れられる場所を探した。
 巨木が並ぶ森で樹のうろを探し、高いところにあったクボタくんサイズの穴に潜り込んだ。珍しくどのナマモノにも見られずに隠れられたことが、かなりラッキーだと彼は思っていた。
 だから穴の中の先客に腕をつかまれ唇を奪われてから、ようやく今日がアンラッキーな日だと気がついた。
 暗くともタバコの臭いですぐにわかる男がニヤニヤと笑いながら再び顔を近づけてくる。
 その顔面に手を置いて引き離そうとするが、シャツの上から唐突に乳首をつままれると、どうしても体が一瞬止まってしまう。
 その隙を突かれるとわかってはいても、回避できた試しがない。
「だあから、慣れるためにもっと経験が必要だって言ったろ?」
「ふ・ざ・け・ん・な」
 そんな攻撃でもない攻撃をしてくるのはアンタくらいだ、と彼は言った。
 腰をつかもうとする手を叩き落としてつままれた乳首をシャツ越しに乱暴に擦る。
「今パプワたちと鬼ごっこしてんだ。アンタ出てけよ」
「ここは俺が先に見つけたんだぜ」
「じゃあせめてタバコを消せ」
「ふうん?」
 そっと外を眺める彼の後ろ姿を見ながら、彼の叔父はタバコをもみ消した。
「俺も鬼ごっこに入るかねえ」
「は?」
「力づくじゃあそろそろつまらねえもんなあ?」
「何言ってんだ。とうとうボケたのか?」
「お前の親父より若い俺に言うことかそれ」
 へっ、と斜に構えながら彼は頭を引っ込め、そのまま入り口近くに腰を下ろした。二畳ほどの大きなうろに座る大きな男二人の距離は二人の微妙な関係をそのまま表しているようで、彼は小さく舌打ちをした。
「なんでこんなとこにいたんだアンタ」
「散歩だよ散歩」
「アンタがそんな健康的なことするわけないだろ」
「サービスならありうるのか」
「サービス叔父さんには優雅なお茶の席を設けてあるに決まってんだろ」
「チッ」
 しばらく無言の時間が流れる。ちょこちょこと外を伺う彼を見ながら、彼の叔父は頭を掻いた。
「おい」
「パプワたちが近いから黙っててください獅子舞さん」
「…お前可愛くなったなあ。なあ、黙ってて欲しけりゃキスしろよ」
「は?」
「お前からしたことねえしな」
「しねえし」
「よし」
 突然立ち上がった叔父を見上げて、彼は予感に鳥肌をたてる。
 止める間もなく外へ身を乗り出した叔父がバカでかい声で、
「シンタローはここにいるぞおおぉぉおおお!!」
 と叫び、慌てて外に顔を出した彼の目には隣の樹の根本に数匹のナマモノを連れて上を向いていた少年が飛び込んできた。
「俺も参加する」
「は?」
「俺を捕まえたやつにはシンタローが作ったオヤツをやろう」
 下から歓声が上がると同時、彼の叔父はうろを飛び出し駆け抜けていった。ナマモノたちが一斉に後を追い、残された彼は残っていた少年を見やる。
「…いや俺は誘ってないぞ?」
「うん?大勢で遊ぶ方が楽しいゾ」
「あ、うん。お前がいいならいいんだ」
「シンタロー」
「ん?」
「ボクは大きなプリンが食べたい」
「プリンねえ」
「だからちょっと捕まえてくる」
「いやお前のリクエストならいつでも作るぞ」
「じゃあ、いいか」
 彼は勢いをつけて飛び降りた。少年の前に立ったところで――かなり遠くから声がする。
「俺が逃げ切ったらシンタローを丸一日借りるからな!」
「んなーッ」
「シンタロー」
 少年に見上げられて彼は、しばし言葉が繋がらずに見つめ返す。すぐに少年が視界から消え、砂埃を追うとその方角から叫び声やら歓声が聞こえてきた。
 止めていた息を吐いて彼は、巨大なプリン作製に必要な材料を考え始めた。
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