【Gypsophila】

　なんでこんな危ないところに家を建てたの？
　地震でも台風でも災害と言う災害ですぐに潰れそうじゃない。


　お前には関係ないだろ。


　ああ･･･なんかこういうところにあるとかっこいいって
　そういうお年頃だった？


　はぁ！？
　そんっ･･･なわけないだろ！


　ふうん。
　まあ、土地としては安そうな場所だよね。


　････。


　あら。それが理由？


　まあそれもあるが･･･
　ここならヘリも来られるし道に迷わないだろう？
　患者が医者のところへ来るのに迷ってしまうのはどうにもな。


　なるほど、一応それっぽい理由があるわけね。


　何がそれっぽいだ。
　医者がどこにいるかわからないような都会はジャングルと変わらん。
　派手な看板をつける趣味もないしな。
　―ジャングルで医者がどこにいるかもわからない状況はもうこりごりだ。


　へえ。


　アンタも軍医だったんだろ？
　ジャングルに行ったこともあるんじゃないのか。


　あるさ。知ってるだろう？


　知るか。
　さっさとそこのクギよこせよ。


　ねえ、大工仕事は大工にやらせたらどうなの、先生。


　そんな金は無い。


　あんなに稼いでるのにねえ。
　何に使っているのやら。
　家、建て直したほうがいいんじゃない？


　この家も、この家を作った大工を気に入ってるんでね、私は。
　金の使い道なんてそれこそお前になんて話すもんか。


　つれないね。


　あーあー、つれなくて結構。


　ちぇんちぇー、お昼ごはんできたのよさ。


　ああ、これが終わったら行く。
　お前も食べるか？どうせカレーだが。


　いただくよ。軍じゃよくカレーを食べてた。
　レトルトはどこにでも持っていけるしね。


　まったく、レトルトカレーを発明した人は偉大―――あ


　あーあ。君、大工仕事は向いてないんじゃないか？
　ちゃんとした大工を呼びなさいよ。


　･･･食べたらな。


　ふふ。まるでこどもが砂場で作ったお城だね。