忍者ブログ
HPから移転しました。
| Home | Info | 更新履歴 | バハラグ | オーフェン | 頭文字D | FF7 | ミスフル | PAPUWA | ブラックジャック | 結界師 | 鋼錬 | DARK EDGE | FE聖戦 | トルーパー | コナン | ワンパンマン | T&B | クロサギ | 宇宙兄弟 | DP | なろう系 | メダリスト |
[121]  [120]  [119]  [118]  [117]  [116]  [115]  [114]  [113]  [112]  [110
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『今年はケーキでな』
 
 一週間ほど前に、ふてぶてしいお子様がふてぶてしく言った。
 最初は何のことかわからなかったんだが、カレンダーを見て気づいた。
 あぁこれか、と。
 仕方なく、なのにニヤつく顔を抑えながら材料を混ぜ合わせる。
 
 
 
 気づくと、ボウルの中のスポンジケーキのタネは
 当初予定していた倍の分量になっていた。
 これは・・・どうすべきか。
 3つほど焼いてナマモノたちに配るか?
 いや、それはやめておこう。あの2匹に食われるのは癪に障る。
 でもなぁ。
 別のボウルの中で滑らかに泡立った生クリームを眺めながら、
 処分を検討する。
 やがてひとつの案が浮かんだが、
 それは実行しづらいといえなくもない案だった。
 まぁ・・・仕方ないよな。
 
 
 
 
 
「シンタロー!腹減っ・・・」
「お、おう、お帰りパプワ」
 
 パプワが最後まで言い切らなかった原因は恐らく
 テーブルの上に乗ったこいつのせい以外に考えられん。
 
「あ、あのな、多く作りすぎちまってその、ナマモノにやるのもと思って」
 
 顔を輝かせながらソレに近づくコタロー。
 そのコタローに首に縄をかけられ、引っ張られているリキッドは既に顔が青い。
 肝心のパプワといえば、無言でソレを見つめている。
 沈黙が恐くてソワソワと視線を泳がせていると、コタローが言った。
 
「ねぇちょっと!一番上になんかこうあるもんじゃないの?」
「あ?あー・・・あぁ、いやさすがにそういう用途で作ったわけじゃねーからそれもどうかと思って」
「んもぅ気が利かないなぁ!見てみたいって言ってるのー!」
「ダメだぞロタロー、シンタローを困らせちゃ」
「えぇ~。パプワ君がそういうなら我慢するけどぉ」
「ハハハ・・・」
 
 つい笑いが乾いてしまった。仕方が無いだろう。うん。
 
「シンタロー」
「ハイッ」
「ん」
「ん?」
「このケーキを切るものが必要だろう」
「あ、あぁハイハイ」
 
 リボンの飾りをあしらった、ナイフにしては長くて細い、
 そして切れそうにないものをパプワに手渡そうと手を差し出した。
 
「あ、え?」
 
 パプワは無言のまま俺の手ごとナイフを握ると、
 その大きさの違う三段重ねの――どうみてもウエディングケーキ――に
 ナイフを差し入れた。
 
 その瞬間がかなり長く感じ(実際は一瞬だったのだろうが)
 顔が熱くなるのをこらえようとしたとき、
 
「えっ、お姑さんが本当にお姑さんとか俺許せないっ」
 
 
 
 ドン
 
 
 
「ちょっと気をつけてよ!倒れちゃうじゃない!」
「あぁわりぃわりぃ。ちょっと埃がかかりそうだったから除けたんだ」
「んも~。早く食べるよー!」
「はいはい」
 
 
 
 パプワの手が離れたナイフを持って切り分けて行く。
 大丈夫だろうか。
 いつもどおりに振舞えているだろうか。
 
 思わず緩む顔を背の高いケーキの陰に隠しながら
 俺はさっきの手のぬくもりを思い出して一人微笑んだ。
PR
Powered by Ninja Blog Template by CHELLCY / 忍者ブログ / [PR]