HPから移転しました。
|
Home |
Info |
更新履歴 |
バハラグ |
オーフェン |
頭文字D |
FF7 |
ミスフル |
PAPUWA |
ブラックジャック |
結界師 |
鋼錬 |
DARK EDGE |
FE聖戦 |
トルーパー |
コナン |
ワンパンマン |
T&B |
クロサギ |
宇宙兄弟 |
DP |
なろう系 |
メダリスト |
『今年はケーキでな』
一週間ほど前に、ふてぶてしいお子様がふてぶてしく言った。
最初は何のことかわからなかったんだが、カレンダーを見て気づいた。
あぁこれか、と。
仕方なく、なのにニヤつく顔を抑えながら材料を混ぜ合わせる。
気づくと、ボウルの中のスポンジケーキのタネは
当初予定していた倍の分量になっていた。
これは・・・どうすべきか。
3つほど焼いてナマモノたちに配るか?
いや、それはやめておこう。あの2匹に食われるのは癪に障る。
でもなぁ。
別のボウルの中で滑らかに泡立った生クリームを眺めながら、
処分を検討する。
やがてひとつの案が浮かんだが、
それは実行しづらいといえなくもない案だった。
まぁ・・・仕方ないよな。
「シンタロー!腹減っ・・・」
「お、おう、お帰りパプワ」
パプワが最後まで言い切らなかった原因は恐らく
テーブルの上に乗ったこいつのせい以外に考えられん。
「あ、あのな、多く作りすぎちまってその、ナマモノにやるのもと思って」
顔を輝かせながらソレに近づくコタロー。
そのコタローに首に縄をかけられ、引っ張られているリキッドは既に顔が青い。
肝心のパプワといえば、無言でソレを見つめている。
沈黙が恐くてソワソワと視線を泳がせていると、コタローが言った。
「ねぇちょっと!一番上になんかこうあるもんじゃないの?」
「あ?あー・・・あぁ、いやさすがにそういう用途で作ったわけじゃねーからそれもどうかと思って」
「んもぅ気が利かないなぁ!見てみたいって言ってるのー!」
「ダメだぞロタロー、シンタローを困らせちゃ」
「えぇ~。パプワ君がそういうなら我慢するけどぉ」
「ハハハ・・・」
つい笑いが乾いてしまった。仕方が無いだろう。うん。
「シンタロー」
「ハイッ」
「ん」
「ん?」
「このケーキを切るものが必要だろう」
「あ、あぁハイハイ」
リボンの飾りをあしらった、ナイフにしては長くて細い、
そして切れそうにないものをパプワに手渡そうと手を差し出した。
「あ、え?」
パプワは無言のまま俺の手ごとナイフを握ると、
その大きさの違う三段重ねの――どうみてもウエディングケーキ――に
ナイフを差し入れた。
その瞬間がかなり長く感じ(実際は一瞬だったのだろうが)
顔が熱くなるのをこらえようとしたとき、
「えっ、お姑さんが本当にお姑さんとか俺許せないっ」
ドン
「ちょっと気をつけてよ!倒れちゃうじゃない!」
「あぁわりぃわりぃ。ちょっと埃がかかりそうだったから除けたんだ」
「んも~。早く食べるよー!」
「はいはい」
パプワの手が離れたナイフを持って切り分けて行く。
大丈夫だろうか。
いつもどおりに振舞えているだろうか。
思わず緩む顔を背の高いケーキの陰に隠しながら
俺はさっきの手のぬくもりを思い出して一人微笑んだ。
PR
プロフィール
HN:
ともひと
性別:
非公開
カテゴリー
P R