忍者ブログ
HPから移転しました。
| Home | Info | 更新履歴 | バハラグ | オーフェン | 頭文字D | FF7 | ミスフル | PAPUWA | ブラックジャック | 結界師 | 鋼錬 | DARK EDGE | FE聖戦 | トルーパー | コナン | ワンパンマン | T&B | クロサギ | 宇宙兄弟 | DP | なろう系 | メダリスト |
[14]  [12]  [11]  [10]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [4]  [3
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

                  《Side Rush》 
「そういやテードに連絡しなくていいのか!?」 
 
雲に飛び込んだラッシュが、アイスドラゴンのたてがみを握りながら前方に叫んだ。 
少し間を空けて、 
 
「大丈夫!」 
 
という声が飛んできた。 
雲の中は気温が低く、湿った肌からあっという間に熱を奪って行く。 
テードを発ってからどのくらいの時が流れたのだろうか。 
ラッシュは2ヶ月間は数えていたが、今はもう数えていない。 
したがって、暑かった季節が雪の季節になって、確かこれが3回目の夏だということしかわからない。 
モルテンとアイスドラゴンは見つかったものの、前線へと旅立ったドラゴン達の消息が全くつかめない。 
帝国軍の動きもない、変わったのは季節と、魚釣りに慣れたこと。 
アイスドラゴンのたてがみを見つめて、ラッシュはため息を吐いた。 
ぶるりと震えた矢先に雲を抜ける。 
白い風景が一転して色をつける度に、美しいと、ラッシュは思った。 
深い青の空に浮かぶ小さな島々。 
人が住まない小さな島を見つけてはビュウに報告するのだが、何故か彼はその島を遠くから見ただけで、ドラゴンがいるかいないかを言い当ててしまう。 
正確には、いるもしくはいた形跡があるところと、全く気配がないところがわかるらしいのだ。 
今までいくつもの島に降りてドラゴンの痕跡探しをしたけれど、全て彼の直感通りだった。 
なので最近は、彼の直感が反応しない島には寄らないことにした。 
つまり、最近は寝泊まりする場所を探す以外に何もやることがない。 
ひどく退屈だと、ラッシュは思った。 
 
足元に広がる雲と島々を眺めたビュウが、トゥルースへ向けて指示を出した。 
欠伸をしながらその様子を見ていたラッシュは、トゥルースからの伝言を待つ。 
 
「ラッシュ、探索がありますよ」 
「マジで!よっしゃあ!!」 
 
ラッシュはだらけていた体に気合いを入れて、ついでとばかりにアイスドラゴンの首筋をぺしぺしと叩く。 
 
「でも今日はこれからテントを張って食料の準備です」 
「え~!」 
「仕方ありません。ほら、行きますよ」 
「ちぇ。出鼻挫かれるってこういうことを言うんだよ。なぁ、アイスドラゴン」 
 
3匹と4人が上陸したのは、森が広がるものの常に雲がかかっているような島だった。 
からりとした暑さだが、時折どこかで驟雨の叩きつけるような音と雷鳴が響く。 
 
「激しい天候の島だねぇ。食べ物あるかなぁ」 
 
くんくんと鼻をならしてビッケバッケが森を覗き込んだ。 
木に巻き付く蔦系の植物が多い。 
 
「アニキ、ちょっと見てきていい?見たことない植物が多いから、ちょっと期待できないと思うけど…」 
「わかった。干物もまだあるから無理はしないで帰って来るんだよ」 
「うん」 
 
ガサガサと森に分け入ったビッケバッケの後ろ姿を見て、サラマンダーが小さく喉をならした。 
ビュウはそれに気付いて、いいよと言う。 
するとサラマンダーは頭に疑問符を浮かべるトゥルースとラッシュの間をふわりと抜けてビッケバッケを追い森へと入って行った。 
いつものことながら、どうしてドラゴンが言っていることがわかるのだろうとラッシュは疑問に思う。 
ビュウは、言っていることがわかるわけではなくて眼の感情を読み取っているだけだと言っていたが、正直違いがわからない。 
 
「ここじゃあ風が直撃してしまうね。森の中に張るしかないかな」 
 
そう言ったビュウに頷きを返したラッシュは、サラマンダーの背中から下ろしたテントを持ってビュウを追う。 
トゥルースはさらにその後ろをついてくる。 
モルテンはアイスドラゴンの分の荷物も背負い、トゥルースの後をついてくる。 
水の気配に敏感なアイスドラゴンは既に水の調達に行っていて、今はいない。 
 
「なぁビュウ。たまには町に行って肉とか酒とか買おうぜ」 
 
空いた腹をおさえながらラッシュが言うと、間を置かずにトゥルースから否定的な答えが返ってきた。 
2人のいつものやりとりに微笑を浮かべたビュウが、考えておくよとだけ言う。 
3人と1匹はテントを張りやすい空間を選び、手早く支度をした。 
そこへアイスドラゴンが水の入った大きなバケツをくわえて戻って来る。 
アイスドラゴンはビュウにバケツを渡して低く唸った。 
 
「え?そうなの?すぐ?」 
 
1人と1匹は空を仰ぐ。 
1匹はまた唸った。 
 
「ラッシュ、確かこの間買った大きなシートがあるだろう、雨避け用の」 
「あ、それなら私の荷物に」 
「すぐに広げてテントの上に…いや、やっぱりテントを移動しよう」 
「これからですか?」 
「うん。早く」 
 
説明する間も惜しんで、ビュウがテントの固定具を地面から抜いた。 
トゥルースもラッシュもそれに倣う。 
アイスドラゴンとモルテンの背に乗って木の上に出ると、遠くの空に真っ黒な雲が見えた。 
 
「なんだあれ」 
「もしかして雷雲ですか?」 
「たぶんそうだ。テントは畳もう。どこか飛ばされないところを探さないと…」 
「アニキー!」 
 
その時聞こえたビッケバッケの声はかなり遠くからで、ラッシュが見渡して探し当てたのは豆粒のようなサラマンダーの後ろ姿だった。 
それがさらに遠くなっていく。 
 
「みんなドラゴンに捕まれ!」 
 
言うや否や、2匹のドラゴンはトップスピードで空を駆け抜けた。 
まだ戦をしていた頃、カーナ城へ向かうとき以来のスピードに、ラッシュとトゥルースは必死でしがみついている。 
風圧に閉じていた目をうっすらと開けて見た先の少年は、風の中でも毅然と前を向いてドラゴンへ行く先を指示していた。 
ほんの数秒後、ドラゴンは地面に降り立った。 
ラッシュがアイスドラゴンの背から滑り降りながら辺りを見渡すと、そこには数軒のコテージがあって、ビッケバッケは目の前のコテージの扉へ体当たりをしていた。 
 
「早く早く!」 
 
ラッシュがビュウから渡された荷物を抱え込んだとき、つんざくような轟音が鳴り響いた。 
 
「うっわ!?」 
 
反射的に身を捻りながら屈み込んだラッシュの腕を、ビュウが引っ張りあげる。 
 
「ビッケバッケに続いて!」 
 
雷が鳴り響き始めた。 
 
いつの間にか巨大な雲が頭上にさしかかって、辺りを暗闇が包んでいた。 
手当たり次第荷物を抱えてコテージへ飛び込んだ時、真っ白な光が窓から室内を照らした。 
 
「間に合ったぁ…」 
 
そう言いながら溜息をついたのはビッケバッケだった。 
ドアの近くに立つラッシュの背中を押して入って来たのはトゥルースで、その後からビュウが水の入ったバケツと大きなリュックを背負って現れる。 
トゥルースがドアを閉めた途端に鼓膜を震わせる雷と雨が地面を叩きつける音が轟いた。 
 
「うひゃあ、すごい雷だな」 
「窓に近づかないでくださいね。雷が飛んできますから」 
「んじゃ、部屋の真ん中に集まってよう」 
 
鎧を外し、壁から壁へ渡したロープに、濡れた服を絞ってかける。 
荷物を探って、濡れたものがないか確認する。 
幸いなことにまだ洗っていない服が軽く濡れた程度だった。 
 
「ドラゴンは外でいいの?」 
「うん、不思議とドラゴンには落ちないんだ。怖がる子はいるけどね」 
「へえ、そうなんだ」 
「むしろ雷食べてたりしてな!」 
「またラッシュは変なことを…。どうやって食べるっていうんですかあんなものを」 
 
冗談なのか本気なのかわからないラッシュの発言にトゥルースがいつものように冷静な答えを返す。 
クスリと笑ったビュウがふと窓を見た。 
そして、呆気にとられたビュウの顔を見たナイトたちが視線の先の窓の外を見て、やはり呆然とした。 
雷雨の中をジグザグに、かなりのスピードで、つまり興奮している様子で、何かが飛び回っていた。 
 
「遠目…なので確かではありませんが、見覚えが…あります。気性が荒く、なかなか懐かない、けれど餌をくれる人間は覚えているという単純な頭の…」 
「あれ、サンダーホーク…だよね?」 
「こんな中よく飛べますね」 
「そういえばサンダーホークって雷好きだったね」 
「うん。…生きてて良かった」 
 
安堵と労りが滲み出たビュウの一言に、ラッシュの脳裏にふと疑問が沸き上がる。 
 
(あれ…?ビュウは人間よりドラゴンの方が大事なのか?) 
 
 
 
サンダーホークはあの日、ビュウ達と別れて先発隊とともに空の部隊を討ちに行った。 
城へは、ドラゴン以前に人さえ誰も帰って来なかった。 
 
「小雨になったしちょっとドラゴンの様子を見てくる」 
「俺も行くぜ」 
「え?」 
 
ラッシュの表情を読み取り、説得は無理だと早々に諦めたのか、 
 
「じゃあお願いするよ。トゥルース、荷物の確認をしておいてくれるかな。ビッケバッケは薪を…暖炉の薪を頼む」 
「はい」 
「うん。気をつけてね」 
「ああ」 
「んじゃな!」 
 
ラッシュが扉を振り返ると、ビュウの姿は既になかった。 
慌てて外へ出ると、昔はよく聞いた指笛が聞こえた。 
 
「懐かしいな、それ」 
 
ビュウは半分振り返り、微笑した。 
また指笛を吹く。 
 
「まだ近くにいるのか?」 
 
ビュウは指をくわえて空を見た姿勢のまま首を振る。 
体の向きを変えて、また指笛を吹いた。 
口笛の数倍…数十倍は大きな音が空へと吸い込まれていく。 
何度か向きを変えて、ビュウは指笛を吹いた。 
ラッシュは、耳をつんざくような指笛の音量に耳を塞ぎながら、キョロキョロと辺りを見渡した。 
しばらくして、ビュウが一点を凝視し始める。 
ラッシュも視線の先を見る。 
そこにはこちらへものすごい勢いで飛んでくる何か-ひとつしか思い当たらない-がいた。 
 
「ラッシュ、離れてて」 
「おう」 
 
何も考えずにビュウと距離を取る。 
アッと思った時には、ものすごい勢いで飛んできた何かがビュウに直撃していた。 
未だに続く雨のおかげで土埃は舞い上がらなかったが、 
 
「久しぶりだねサンダーホーク!ははっ、くすぐったいよ!」 
 
ぬかるんだ地面に押し倒された上に巨体に馬乗りされて顔をなめ回されている-ビュウは色々と悲惨な状態に見えた。 
思えば初めてドラゴンを見たときもこんなシーンで、ビュウが襲われたと思い、恐怖でその場に凍り付いていた…気がする。 
 
「変わんねぇなぁ…」 
「そうだね、でも健康そうで何よりだよ」 
 
サンダーホークのことじゃねえよ!と言ったラッシュの声は、また始まった雷鳴で途切れ途切れにしかビュウの耳には入らなかった。 
 
「サンダーホーク、また俺達と戦ってくれるかい?」 
 
勇ましい返事が聞こえる。 
ビュウは嬉しげにサンダーホークの頭を撫でながら、泥から腰を上げた。 
 
「雷が止んだら何か餌を持ってくるよ。だから遠くに行かないようにな」 
 
またサンダーホークが鳴いた。 
 
 
 
ビュウと共にコテージへ戻ることにしたが、泥まみれのビュウはそのままでは入れないと言う。 
せめて雨で泥を流してからと言い張るところに、声がかかった。 
 
「風邪なんて引いたら大変です。中で脱いでください」 
 
振り返ると、トゥルースが扉の前にいた。 
ビュウが渋る間もなく、さっさと中へ入ってしまう。 
仕方なさそうにビュウはラッシュとともにコテージへ入った。 
直ぐにトゥルースがてきぱきと指示を出す。 
 
「そこで脱いで、横のバケツに服を入れてください。奥にシャワールームがありました。お湯は出ませんが、体をすすぐくらいは出来ます。 
 
こちらに温めたタオルを用意しておくので、浴びたら直ぐにそれで身体を温めてください」 
 
「…トゥルースのかーちゃんモード、久しぶりに見たな」 
 
横にいたビッケバッケに、ラッシュがひっそりと囁いた。 
 
「うん。機嫌悪そうだよね」 
「そうか?いつもあんな感じじゃないか?」 
「そんなことないよう」 
 
手に持った魚の燻製をかじりながらビッケバッケが返事をする。 
そうかなあと返しながら、ラッシュはもたもたと服を脱ぐビュウを見る。 
 
「滑るのか?俺やろうか?」 
 
さっとビュウの顔色が変わって、しかし直ぐに最近見せる少し困ったような笑みで、 
 
「大丈夫だ」 
 
と答えた。 
泥塗れの指が裾を捲り上げ、一息に上着を脱いだ。 
とたんに、周囲が-正確にはトゥルースとラッシュの2人が-息を呑んだ。 
所々に泥が付いた体の、あちこちに傷がある。 
剣で斬られたような傷、親指くらいの太さの物で刺されたような傷、火傷の跡と思われる傷-これはラッシュにもあるので特によくわかる-などが、だいぶ薄くなってはいるがあちこちに付いている。 
 
「おいおい、いつの間にそんな怪我したんだよビュウ」 
「小さい頃から訓練はしてたから…」 
「今まで一緒に着替えなかったのはそれが理由か!なんだよみずくせぇな。そんなん見ても俺は引かねぇのによ」 
「怪我するってことは未熟な証拠だから恥ずかしかったんだよ。せめてラッシュ達の前では先輩らしくかっこつけたかったんだ。ってことにしておいてくれ」 
「ぷっ、なんだそりゃ。ま、傷なら俺も負けてねえぞ!」 
「…ラッシュも乾かすんですから脱いでください」 
「お、おう」 
 
濡れて貼りつく服をもぎ取りながら、ラッシュは横目でビュウを見た。 
ズボンも脱いだビュウの脚にもやはり大量の傷が見えた。 
その多さから訓練の厳しさを想像し、ラッシュは首をすくめた。 
そのラッシュの正面にいたトゥルースは、既に-恐らくビュウがズボンを脱ぐ前から-いなかった。 
お湯をわかしに行ったのだろうか、キッチンであろう部屋からガチャガチャと音がする。 
 
「着替え着替え~っと」 
 
ラッシュはリュックを覗き込み、適当に服を引っ張り出す。 
服を手に持ち振り向くと、ビュウは浴室へ行ったと見え、ビッケバッケが1人で2人分の服を洗おうとしているところだった。 
 
「ビュウの傷すごかったなぁ」 
「そうだね」 
「俺も洗うの手伝うよ」 
「ラッシュがやるときれいにならないもん。トゥルースの手伝いしてきなよ」 
「ちぇ。どうせ不器用だよ。おーいトゥルースなんか手伝うことないかー?」 
 
ありませんと返事が来て、ラッシュは結局暖炉の前で火に当たることにした。 
 
 
 
金持ちのコテージなのだろう。 
豪華なソファはふかふかとしていた。 
暖炉の火の上には吊された鍋がある。 
既に何かがグツグツと煮えていた。 
 
「なぁこれ、沸騰してるけど」 
「あっ、今行くね」 
 
洗濯をする手を止めて、ビッケバッケが長い棒を持って暖炉の前にやってくる。 
棒の先の鉤になった部分を器用に鍋の取っ手に引っ掛け、鍋とともにキッチンへ入っていく。 
トゥルースと何か話す声がした。 
少ししてからビッケバッケが湯気のたったタオルを持って現れる。 
ラッシュは礼を言って受け取った。 
 
「あちあちうわっち!!」 
「熱いよって言ったのに」 
 
笑いながらビッケバッケがもうひとつのタオルをバスルームへ運ぶ。 
そちらでも熱いから気をつけてと言う声がした。 
ビュウの返事の後にぱたぱたとビッケバッケが走って来る。 
 
「えーっとアニキの着替え…」 
 
そしてまたバスルームへ戻って行く。 
入れ替わりにトゥルースが戻ってきた。 
ラッシュは暇を持て余しつつも、不機嫌そうな幼なじみには声をかけずにビュウが戻るのを待っていた。 
 
 
 
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 
 
 
                  《Side Bikkebakke》 
「なぁ、ビュウの父ちゃんってどんな奴だったんだ?」 
 
夜になった。 
雨は勢いを増すばかりで、そろそろ体にかびが生える気がして体がむずむずする。 
そんなことを考えていたら、久しぶりのシチューに喜んでいたラッシュがそんなことを口にした。 
 
「親の顔は知らないんだ。あれ?言ったことなかったっけ」 
「普通の話なんてほとんどしてないんじゃないか?オレたちが入った時は戦争中だったし…1日も早く戦力になれってしごかれてたもんな」 
 
正面に座るラッシュに同意を求められて、ボクは頷いた。 
 
「そうだね」 
「そうか…。前の隊長が城に赤ん坊のオレを連れてきたらしい」 
「あの弱いくせに威張ってた奴か?」 
「いや、ラッシュ達も一度会ったことあるくらいの。代理じゃなくてさ、前の隊長」 
「私たちが入ってすぐに亡くなった?」 
「じゃあその人が親代わりなのか?」 
「親というなら…センダックはあの頃から爺さんだったし、そうかもな。マテライトもよく来てた」 
「オッサンばっかだ」 
「言われてみるとそうだな」 
「オレはでっかいことしたくて家を飛び出たんだ。ビュウに会う数ヵ月前かな?」 
「3人は子どもの頃からの付き合いだったよな。もしかしてみんな一緒に家出したのか?」 
「ううん。ボクはもっと前から家を追い出されて…モグモグ…あちこちで悪いことしてたよ」 
「私は家族と暮らしてました。でも両親とも…死にました。それから家出したラッシュがうちに転がり込んで来たので一緒に暮らし始めて…」 
「ボク久しぶりにトゥルースの所に遊びに行ったら、トゥルースのお父さん達は亡くなってるしラッシュがいるしでびっくりしたよ」 
「でも家賃なんて払えないからさー、すぐ追い出されてしばらくふらふらしてたんだよな」 
「そうですね」 
「空腹も限界でね、もうあれ以上万引きとか、そういうのするの嫌になって。 
 お城にある食べ物を分けてもらえないかなってお城に行ったけど 
 勿論門前払いでね。あの頃のボクが一番痩せてたよ」 
「腹いせがてら城門横に入り浸ってたんだ」 
「そこへ隊長が来た、と」 
 
話を聞いていたアニキが、なるほどと相づちを打つ。 
そしてラッシュの顔を見て、 
 
「そういえばラッシュの体も傷が多かったな」 
 
と呟いた。 
心なしか強張っているように見えた。 
 
「あぁ、うち母ちゃんが再婚した男が乱暴でさ。よく殴られたんだ」 
「半分以上は自業自得でしたよ。喧嘩して人様の家の壁壊したとか。大体あれはおばさんの再婚に反対という反抗からの」 
「そんなんじゃねえし壁壊した時は相手が殴って来たんだよ!」 
「他にも真面目に働かないでさぼってるとか、ボーッと歩いてて店先の売物落として傷つけたとか」 
「な、なんだよあるだろそのくらい!」 
「ありませんよ」 
「自分が悪いことしたから叱られてるのに、手を出すからいけないんだよ」 
「だってあいつら二言目には目付きが悪いだの貧民街の産まれだの言うんだぜ!」 
「はは。いろんなとこから恨まれてそうだね、ラッシュは」 
「隊長は」 
「ん?」 
「隊長にも何かあるのでしょう?思い出とか」 
「ん…ドラゴンのことか訓練の思い出くらいかな」 
「ずっと城で暮らしてたのか?あの男ばっかりの兵舎で」 
「すごく小さい時はさすがに違うと思うよ。でも気付いたらドラゴンの横にいて…あれ?でも3歳くらいのときドラゴンの横で寝て怒られたような」 
「ベッドよりドラゴンと野宿かよ!」 
「アニキらしいね!」 
 
ボクの声にかぶって、雷が轟いた。 
同時に部屋が真っ白な光に包まれる。 
目を閉じたけれど、光と音はしばらく続いた。 
音がしなくなっておそるおそる目を開けると、ラッシュはもう食事を再開していた。 
 
「今のはまたずいぶんと近かったですね」 
「地面揺れたな」 
「雨が降っているから火事にはならないと思います」 
「うん」 
「そういえば明日は?」 
「あぁ、まだ話してなかったな。サンダーホークも見つかったことだし、テードに戻ろうと思う。 
 ただ今の帝国の様子を少し見て行きたいから…どうしようかなって」 
「わかりました。では相談しましょう」 
 
アニキとトゥルースはこれからの算段を始めた。 
ボクはラッシュと一緒にシチューを食べながら話をする。 
ラッシュに、何故今日はこんなご馳走が出せるのかって今更ながら質問された。 
 
「ここにあった食料をもらったんだ」 
「えっ、てことはつまり盗品かよこれ」 
「もうここの持ち主だってここに来れないもん。腐っちゃうよりはボク達が食べるほうが勿体なくないよ」 
「それもそうか」 
「ね。明日の朝も久しぶりにお肉が食べられそうだよ。テードに戻るときもご飯の心配しなくてすみそう」 
「そりゃいいな!何があるんだろ。オレもなんかもらって行こうかなぁ」 
「缶詰ばっかだけど、確かラッシュの好きな」 
 
ダンッ- 
テーブルが揺れて、ボクたちは驚いて音の方-ラッシュの隣のトゥルース-を見た。 
 
「認められません!」 
 
トゥルースは頬を紅潮させて拳を握っていた。 
 
「でもドラゴンは連れていけないし4人でコソコソ行動するのは無理だって…」 
「それならもう1人連れていくべきです!1人で行くなんて無謀もいいところです!」 
「でも偵察だけだし」 
「何かあったらどうするんですか!あなたは隊長なんですよ!!」 
 
いつもは怒ってもここまで激しくなることはないのに、トゥルースは久しぶりに感情を爆発させているみたいだった。 
 
「何かあったときは逆に身軽なビュウ1人の方が逃げやすいんじゃねーの?」 
「…!」 
 
ラッシュが、多分トゥルースの顔がまともに見えないからだと思うけど、さらっとそう言った。 
途端に立ち上がってすごい怖い顔をしたトゥルースに睨まれて、ラッシュは今更だけど首を振った。 
 
「いいいやなんとなくそうじゃないかって思っただけだから!!」 
 
トゥルースは怖い顔のままテーブルを見つめた。 
さっき叩いた拍子にスプーンが飛び跳ねたので、シチューが少し飛び散っている。 
握った拳をさらにギュッと握りしめたのが見えた。 
 
「…頭を、冷やしてきます」 
 
そのままトゥルースは雨が降る外へ出て行った。 
ボクは横のアニキをちらっと見る。 
アニキもテーブルを見つめていた。 
 
「な、なぁ…」 
「ごめんラッシュ、ビッケバッケ。…オレ、トゥルース呼んでくる」 
「いや、でも少しは時間おいたほうがいいんじゃねえの?」 
「長引くとこじれる気がするからさ」 
「あ…そ…」 
「アニキ、外に行くなら気をつけて。雨と雷もだけど、もう暗いから」 
「うん」 
 
アニキは立ち上がって外へ出て行った。 
ラッシュはスプーンを持って一口食べたけど、 
 
「なんか不味くなったな」 
 
と言ってからは手を付けなかった。 
 
 
 
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 
 
 
                  《Side Knights》 
「トゥルース、トゥルース何処だ?」 
 
返事がない。 
心配そうにこちらを見ていたモルテンと目を合わせると、モルテンは横を向いた。 
 
「あっちか。ありがとう」 
 
ひと撫でしてから暗い木立へと足を踏み入れる。 
トゥルースはすぐに見つかった。 
 
「無事か?」 
「…」 
「横、いいかな」 
 
返事がないので、ビュウは躊躇いながらもすぐ横に座った。 
その辺りだけは土が乾いていた。 
ビュウは上を見た。 
そんなに高くないが枝葉の多い木の下だった。 
 
「武器も持てないからさ、トゥルースの言うとおり…もう一人連れていくよ」 
「…」 
「ごめんな」 
「なんで…謝るんですか。話し合いに怒りを持ち込んだのは私です」 
「えっと…いつも心配かけているという自覚は…あったからさ…」 
「…」 
「…」 
「私」 
「え?」 
「私が怒ったのは私情からです」 
「?」 
「隊長の身が危ないとかそれも勿論ありますが」 
 
ビュウはトゥルースを見た。 
トゥルースはビュウを見ていて、ビュウはその真面目な顔に驚いて思わず目を逸らせた。 
 
(迫力が…兵士っぽくないから兜をかぶったんだっけ?優男顔とか言ってたような) 
 
確かに面立ちは女性…というよりは優しげだ。 
そんな顔が真剣にビュウを見ている。 
 
「私が反対したら隊長がすぐにそう言うのは…もう一人連れていくと言うのはわかってました」 
「あはは…」 
「だから誰を連れていくと言うのかもわかってました」 
「?」 
「嫉妬…したんです。ビッケバッケに」 
「…嫉妬?」 
「私じゃ役に立てませんか?」 
「まさか、そんなことはない」 
「私達がまだまだ未熟なのは自覚しています!でも」 
「違うよ、トゥルース」 
「何が違うのですか。私は…」 
「もっと簡単に考えてくれ。オレとトゥルース、ラッシュとビッケバッケで別れたらどうなるか」 
「…主に食料と金銭面が大変なことに」 
「オレとラッシュだと、ラッシュを止めるのに精一杯で…何も出来ないだろ?」 
「目に見えていますね」 
「だからだよ」 
「…だからですか」 
「他意はないんだ」 
「…」 
「オレじゃ出来ない、皆をまとめる役をしてくれてるのはトゥルースだよ」 
「…」 
「あはは」 
「?」 
「いや、まさかトゥルースが嫉妬してるなんて言うとは…ね」 
「仕方ありません。ビッケバッケが…色々と隊長のことを知ってる気がして」 
 
ビュウの肩がゆれた。 
何か言ってた?との問いに、何も言ってはいませんでしたと、トゥルースが答える。 
 
「そうか…」 
 
ビュウの周囲の空気が若干張り詰めた。 
トゥルースは気付かない。 
 
「私…いつか隊長のお役に立てる日が来るのでしょうか」 
「何言ってるんだ。今でさえかなり-」 
 
突然ビュウの体が揺らいで、トゥルースにもたれかかった。 
慌てて抱きとめたトゥルースにも、唐突に目眩が襲い掛かる。 
おかしいと思いながら、トゥルースはビュウを抱え上げようとして膝を付いた。 
強まる雨に、木の内側からは外がほとんど見えない。 
 
「助けを…」 
 
隊長だけでも、と願うトゥルースの意識がぷつりと途切れた。 
 
 
 
ビュウとともに倒れこんだその先から、ぺたぺたと何かが近付いてくる足音がした。 
倒れている2人を見つけると、ばしゃばしゃと泥を飛ばしながら駆け寄ってくる。 
 
「いたよ、サラマンダー」 
 
そういいながら軽々と2人を肩に抱き上げて、自分の後ろから付いてきていた赤いドラゴンの背に乗せた。 
最後にビッケバッケを乗せて、ドラゴンは地を蹴った。 
低空でほんの一瞬と思える飛行の後、サラマンダーはコテージの前に着いた。 
ビッケバッケは再び2人を担ぎ、コテージの扉を慎重に開ける。 
振り返って、 
 
「ありがとう」 
 
と伝えてから、中へ入って扉を閉めた。 
コテージでは既に1人、寝袋の中で呻いていた。 
とりあえず2人をおろし、それぞれの口の中に緑色のドロリしたものを流し入れた。 
顔色を見て、蒼白な方-ビュウの服を脱がして体を拭き、新しい服を着せてから寝袋へ寝かせる。 
トゥルースも同じように寝かせてから、自身は余っていたほんの少しの緑色の液体を飲み干した。 
 
 
 
翌日の昼近くになって、まずラッシュが目を覚ました。 
「調子はどう?」 
そう聞いたのはやはりビッケバッケだった。 
 
「あれ…?」 
「倒れたんだよ」 
「あ…あぁ、そういや昨日シチューが突然不味くなってからの記憶がねえや。…みっともねぇとこ見せちまったな。トゥルースなんて呆れてるだろ?」 
「ううん」 
「そうか?とりあえずビュウにもう大丈夫だって言ってくる」 
「まだ無理だと思うなぁ」 
「大丈夫だって。ドラゴンに乗ってるだけだしさ」 
「ラッシュじゃなくて」 
「ん?」 
 
ビッケバッケはラッシュの後ろを指差す。 
何気なく振り向いたラッシュの目に、ふたつの寝袋が飛び込んできた。 
 
「…えっ、2人もかよ!」 
「うん。ラッシュはすぐに薬飲ませられたけど、2人は少し遅れたし薬を半分こして飲ませたから…まだ動けないよ」 
「なんでだ?てかビッケバッケはよく無事だったな」 
「ボク昔から体は人一倍丈夫だったから」 
「言われてみりゃそうだな…」 
「熱が上がってからとかじゃなくて、普通だったのが唐突に倒れたから、もしかしたら伝染病かなと思って万能薬を使っちゃったんだ」 
「えっ、あんな高いのをかよ」 
「うん。眠くなる薬も入れたから、しばらくは寝てると思う」 
「そ…っか。じゃしばらく暇だなぁ」 
「うん。でもラッシュももう少し寝ててよ。ぶり返してももう普通の薬しかないから、もし伝染病とかだと治せないよ」 
「わ、わかった」 
 
とりあえず洗顔だけ済ませたラッシュが、再び寝袋へ戻る。 
ビッケバッケにお腹空いてる?と聞かれるが、言われてみると食欲はなかった。 
 
「今日雨が降らないみたいだから、ボク外に干してくるね。何かあったら窓からサラマンダーが見てるから、サラマンダーに言ってね」 
 
すぐ上の窓を見ると、赤いドラゴンの緑色の瞳があった。 
バタンと扉が閉まる。 
 
「暇だなぁ…」 
 
ラッシュはぽつりと呟いたが、すぐに眠気に襲われた。 
 
 
 
 
 
 
昨日の悪天候が夢だったような快晴が広がっていた。 
ビッケバッケは最後の一枚を干し終えて、 
 
「よし」 
 
と頷いた。 
昨日室内に干したものの生乾きから進まず、異臭を放ち出したので全て洗い直したのだ。 
アイスドラゴンが大きなバケツを持って戻ってきた。 
水を汲んできたのだ。 
水が好きなドラゴンだけあって今までおかしな水を運んできたことは一度もない。 
 
「ありがとう。これでしばらく飲み水に困らないね」 
 
大きなバケツを受け取って、コテージの中へ運び込む。 
3人の寝顔を見て、ビッケバッケはまた外へ出る。 
一度伸びをして、階段に座った。 
うとうとしたところでモルテンに顔を撫でられる。 
 
「ん…?」 
 
モルテンはビッケバッケに背を向ける。 
乗れと言われているような気がして、ビッケバッケは誘われるままにモルテンの背中に倒れこんだ。 
 
「ふわぁ…ふかふか…」 
 
すぐにビッケバッケは眠りについた。 
昨日一睡もせずに看病していた疲れが、顔に浮き出ていた。 
 
陽が落ち始めて、ビッケバッケはサラマンダーに揺すり起こされた。 
 
「わ、もう夕方?洗濯物入れなきゃ」 
 
バタバタとビッケバッケが働き始める。 
両手一杯に乾いた服を抱え、一度コテージに戻るかそれとも持てるだろうかと悩む横から手がのび、ビッケバッケが抱えていた洗濯物を取り上げた。 
 
「あっ」 
「持ってくよ」 
「だ、ダメだよアニキまだ寝てなきゃ!」 
「お腹空いてさ…これ持ってったら、何か食べたいな」 
「う、うん!」 
「先行くよ」 
 
ビュウが両手で洗濯物を抱えて歩きだす。 
ビッケバッケは残りの洗濯物を手早く掻き集めて後を追った。 
 
「アニキ、気分は?」 
「空腹で気持ち悪いくらいかな…」 
「そこおいといて!すぐお粥作るね!」 
 
キッチンへ走るビッケバッケの後ろ姿を見送って、ビュウは今取り込んだ衣服を畳み始めた。 
2枚畳んだ所で、 
 
「腹減ったぁ…」 
 
とラッシュが起きてくる。 
キッチンへ食物を漁りに行ったもののビッケバッケに止められる声がした。 
その声で起きたトゥルースは、腹を押さえる。 
 
「おはよう、トゥルース」 
「あ…隊長。おはようございます。…なんかよく寝たような」 
「オレも。昨日ワインでも飲んだっけ…」 
「いやまさか…。あれ…よく寝たと思ったのにまだ陽が昇ってない…」 
「あれは夕焼けだよ、トゥルース」 
「え?あぁ…え…ええっ!?」 
 
跳ね起きたトゥルースがビュウの横で頭を床に押しつける。 
 
「今日の予定…申し訳ありません!!」 
「いや、オレも今さっき起きたんだ。…昨日なんかあったっけ」 
「昨日…」 
「昼過ぎくらいから…サンダーホークを見つけた後辺りから記憶が曖昧なんだよね」 
「昨日…そうですね。サンダーホークが…外にいて?」 
「さっき外行ったらちゃんといたから、多分呼んだんだとは…思うんだけど」 
「私はシチューを作っていた記憶はあるのですが…食べましたか?」 
「…さぁ」 
「2人とも何言ってんだよ。昨日喧嘩してたじゃないか」 
 
鍋を両手で運んできたラッシュが言った。 
その後ろを小鉢を持ったビッケバッケがついてくる。 
 
「え?」 
「私と隊長がですか?」 
「そう。偵察がどうのこうの。ここに置いていいのか?」 
「うん。とりあえずご飯にしようよ」 
 
ビッケバッケが鍋から小鉢に粥をよそう。 
トゥルースがそれを受け取って皆へ回す。 
 
「昨日トゥルースすげぇ怖い顔してたぞ」 
「私が?」 
「うん」 
「アニキも覚えてないの?」 
「ぼんやりかな」 
「で、どうするんだ偵察」 
「ああ、そうだな。とりあえずカーナ旗艦の位置だけは掴んでおきたいな」 
「カーナの近くにいるかなぁ」 
「占領されたって聞いたし…いないかもな」 
「とりあえずカーナの傍を探って見る?」 
「それは危険だろう」 
「そうか?空だけなら平気じゃないか」 
「何処に配備されたかわかればな」 
「食料の配分とかしてないのか?」 
「ああ…それだ」 
 
ガサガサとトゥルースが荷物をあさり、地図を出してくる。 
テーブルに広げるスペースもないので、傍の椅子の上に置いた。 
 
「もう戦争はしていませんから、グランベロスに大量の食料を運んでいるはずです。各国を治めている幹部等にも配分しているはずですが、旗艦にいる兵士だけなら少量の輸送のはずです」 
「ふむふむ」 
「だから一番荷物の少ない飛行艇をつければ…」 
「なるほどな」 
「問題はどうやって偵察するかですね。ドラゴンで近付けませんから」 
「忍び込むしかないか」 
「下っぱの兵士の装備を持ってきて潜り込むとか」 
「それだな」 
「1人はドラゴンで待機、3人で見て回ろう。輸送の準備をしているところなら将軍クラスはまずいないはずだ」 
「ボクが待ってるよ」 
「わかった」 
「恐らくここが食料を分配しているところです。ドラゴンはここに置いて-」 
「兵士の装備は-」 
「非常事態のときは-」 
 
トゥルースとビュウが次々に段取りを決めていく。 
ラッシュは再び眠気襲われたのか、粥を詰め込んで早々に寝袋へ戻ってしまった。 
 
「何はともあれ、まだしばらくはここを動かないほうがいいな。体調を万全にしてから行こう」 
「そうですね…っと、すみません私もまた眠く…」 
「ああ…」 
「片付けておくから2人とも寝ててよ。ボクは大丈夫!」 
 
2人は礼を言ってから歯を磨いたり着替えたりと支度を整えてから寝袋へ入った。 
すぐに寝入ったトゥルースの隣で、ビュウがただひとり起きているビッケバッケに 
 
「ビッケバッケも寝てくれ。今日はきっと大丈夫だ」 
 
と言った。 
ビッケバッケも頷いた。 
それを見たビュウはすぐに眠りに落ちる。 
残されたひとりは洗い物を終わらせてからランプの明かりを絞り、3人の顔色を見てから寝袋へ潜り込む。 
寝静まった部屋を緑色の瞳が窓の外からじっと見ていた。 
 
それから1度だけ熱が上がったものの悪化することはなく、それでも大事な時だからと 
大事に大事を重ねた彼等がその島を離れたのは、10日後の事だった。
PR
Powered by Ninja Blog Template by CHELLCY / 忍者ブログ / [PR]