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                  《Side Anastasia》 
カーナ戦竜隊の再興を目指し、少年4人が飛び立ってから数日後。 
孤島には自活するための畑がこしらえられた。 
種を蒔く中年女性の横では、今まさに鶏小屋を作り終えたばかりの大柄な青年が、精悍な顔を上げた。 
右手の金槌を道具箱に戻し左手で額の汗を拭う。 
そして振り返り、小屋が出来たことを女性に伝えた。 
ちょうど種を蒔き終えた女性は青年と共に鶏小屋を見上げた。 
太くはないがそこそこの木が、中央から生えていた。 
そのまわりには壁がわりの手製の金網が張り巡らされている。 
四隅には柱が立っていて、天井の屋根を支えていた。 
二人は小屋の前で何かを指差しながら話しているが、内容までは聞こえて来ない。 
少しして、二人は連れ添って歩き、彼女の位置からは見えない所へ移動した。 
窓から身を乗り出すようにして二人の後ろ姿を追う彼女の後ろから苦笑が漏れる。 
彼女はハッとして持っていた食器を戸棚にしまった。 
 
「バルクレイって器用なのね」 
「大工さんの家に産まれたと話していらっしゃったわ」 
「それより鎧着てないところなんて初めて見たわ私。若かったのね」 
 
口々に出される青年の話題に、彼女-アナスタシアは振り返る。 
 
「なんなのよもう!」 
 
すぐにくるりと戸棚に向き直り、クスクスと笑い声が漏れてくる後ろを意識しながらも、食器をしまう。 
背の低い彼女は精一杯背伸びをして、けれど届かない上段を見て頬を膨らませた。 
そんなアナスタシアの後ろから白い腕が伸び、彼女の手からひょいと皿を取ったかと思うと、丁寧に上段へ置いた。 
アナスタシアは振り返る。 
きらきらと光るようなブロンドの、ウェーブがかかったショートボブの髪に、美しい顔がおさまった美女が立っていた。 
並の男性より背が高いその美女は、並の女性より背が低いアナスタシアとは頭2個分の違いがある。 
思い切り見上げながら、アナスタシアは礼を言った。 
そしてにこりと微笑み「どういたしまして」と返す美女-ルキアに、 
 
「ルキア、髪切っちゃったの?」 
 
と問うた。 
 
「そうなの。焼けちゃったし、もうどうしようもなかったから」 
 
ルキアは軽いため息のようなものをつきながら、肩までの髪をつまみあげる。 
そんな仕草まで、アナスタシアには大人びて見えた。 
 
「短いのも似合うよ!」 
「あら、そう?短いと男性と間違われることがあったから、あまりいい思い出ないの」 
「ナニソレ!失礼なやつもいたもんね!」 
「やっぱり女の子は背が低い方が可愛くていいわ」 
「そんなことないわよ!こどもにしか見てもらえないことだってあるし」 
 
そう言いながら窓の外に視線を移し、ちょうど鶏を抱えて戻って来ていた二人を見つける。 
小屋に離された鶏は、新しい小屋に満足したのか、早速中央の木に登っている。 
ふと、外にいる二人のうちの1人が、アナスタシアのいる窓を見る。 
アナスタシアはすぐに視線を反らしてから、ハッとしてルキアを見上げた。 
ルキアは外を見ていた。 
恐らくこちらを見ていた1人と目が合っている。 
 
「いいなぁ…」 
 
ぽつりと、アナスタシアが呟いた。 
 
「え?」 
 
ルキアが聞き返す。 
 
「アタシもルキアくらいスタイルがよくて美人だったらなぁ…」 
「なぁに突然。褒めても何も出ないわよ?」 
 
最後の皿を戸棚にしまう。 
アナスタシアの今日の仕事は、後は破れたシーツを縫うことだけだ。 
なんとなく出ない気分をもてあましていると、頭上から小さな吐息が落ちてきた。 
 
「家事…全然出来なくてごめんなさいね」 
 
ルキアがアナスタシアを含め、そこにいる4人に向かって言った。 
 
「薪割りくらいしか出来なくて…ほんと…」 
 
落ち込む様子を見せるルキアに、フレデリカは裁縫の手を止めて、 
 
「私もルキアさんと同じで…これしか出来ないの。お薬の調合も…あるけど、今は薬草が採れる時期でもないし…。 
 やれることをやってくれるだけで、いいんですよ」 
「そうそう!ひがな一日訓練とか言って、薪割りもしないオッサンに見習って欲しいくらいよね!」 
「そういえばマテライトって何してるの?」 
「なんかよくわかんないけど~。ボーッとしてるか斧を振り回してるかよ」 
「今度びしっと言わないとね」 
 
アナスタシアが針糸を受け取り、床に座り込む。 
そしてまた女性達がかしましく話し始める横で、フレデリカが隣に腰を下ろしたルキアにそっと話し掛けた。 
 
「何か気になることでもありましたか?」 
 
ルキアの返答を待つ間、彼女は蜜色の編まれた長い髪を肩に掛けなおし、針を止めぷつりと糸を切った。 
優雅に動く手は、病弱な彼女によくあった真っ白な手で、ルキアは自分の黄金色に焼けた肌に視線を落とす。 
 
「私…小さい頃から背が高くて、よく男の子にからかわれたわ。女の子らしいことをしても似合わないって言われて。 
 だからお裁縫もお料理も反発してやらなかったの。出来ないの。女なのに」 
 
フレデリカは手を止め、うつむき加減に話すルキアを見た。 
 
「でも、12…13歳のころかな。同じように背の高い女の子に会ったの。すごく男勝りでね、初めて会ったときは男の子だと思ってた」 
 
いつの間にか部屋は静まり、ルキアの声はよく響いていた。 
 
「彼女と一緒にいるようになってからは、ふっきれたというか…逆に好きなことをやりやすいって考えるようになったわ。 
 裁縫が苦手で似合わないなら、他の女の子がやれないことをやっちゃおうって」 
「それで、剣を?」 
「そう。その子と一緒にね」 
「面白い話ね!」 
「それでそれで?その後はどうなったの?」 
「どうもしないわよう。軽い男に付きまとわれたり、女の子に憧れられたり。…男運ないのかしら」 
「え~!ルキア美人なのに!」 
 
思わず声を上げたディアナに、ルキアは本当よ、と苦笑混じりに答えた。 
 
「これでも尽くす女なのになぁ~」 
「尽くす…女…。面倒見いいですしね、ルキアさん…」 
 
エカテリーナが針を刺しながらぼそぼそと言う。 
恥ずかしがりやで人見知りのエカテリーナがこうして会話に入って来るのは珍しい。 
 
「あ~ぁ。いい男、いないかしら」 
「ルキアどういう人が好きなの?」 
「え?私?うーん。頼りになる人…かなぁ」 
「頼りになる人ねぇ。うーん」 
「ま、今ここにいるメンバーで一番頼りになるのはゾラよね」 
「ぷっ」 
「アハ!確かにゾラだわ」 
「バルクレイも真面目だけど、真面目過ぎるのよね」 
「あら、真面目の何がいけないの?」 
 
にぎやかな声が小屋の外にまで響く。 
沈痛な面持ちで小屋の裏にいたマテライトは、頭を掻きながら腰を上げた。 
磨きあげた兜をそっと横に置き、今度は鎧を手に取った。 
ぼろ布一歩前の布をバケツの水に浸し、絞らずそのままびちゃびちゃと鎧を磨く。 
黄色い叫び声に布を取り落としそうになり、溜息をつく。 
 
「何故女子はこうもやかましいのかのう…まるでワシみたいじゃ」 
 
胸当て、背、順繰りに磨きながら、ふと顔を上げた先に、小さい人影が坂を転げるようにして降りてくるのが見えた。 
相手にもこちらが見えたらしく、 
 
「マテライト~!!」 
 
と手を振り叫んだ。 
その声が聞こえたのか、マテライトの後ろの窓が開かれフレデリカが顔を覗かせる。 
マテライトの姿を認めると、あ、と口を押さえた。 
とりあえずそれは無視したマテライトが、走り近づいて来る少女のただならぬ様子に気付き、素早い手つきで鎧を着けた。 
少女の指差した先の空に浮かぶ小さな船を認めると、斧を抱えて船の進路方向へ猛烈に駆け出した。 
 
「メロディア、どうしたの?」 
 
小屋の窓辺にぶつかるようにして止まった幼い少女は、切れ切れに 
 
「空!小さい船がこっち来るの!」 
 
と訴えた。 
 
 
 
 
 
 
                  《Side Matelite》 
マテライトの目の前で危なげな運転によって着陸した小型船は、とても帝国軍が乗るものには見えなかった。 
 
「反乱軍に入る人たちかしら?」 
 
続々と集まる面々に、マテライトは自分より前へ出ないよう指示を出した。 
 
「でもあんなぼろい船…帝国軍が使うわけないじゃない」 
 
それでも警戒を解かずに斧を構えているマテライトの前で、船の後部についている扉が開いた。 
出てきたのは、無精髭のやつれた男と、その男を支える巨体の男。 
支えられている男が顔を上げ、マテライトに焦点を合わせてから、言った。 
 
「…我等はマハール騎士団でアリマス。反乱軍に…さん…」 
 
バタリ、と、男2人は倒れた。 
呆気に取られた面々をおいて、ゾラが駆け寄って2人に回復魔法をかける。 
そしててきぱきと指示を出しながら2人を小屋へと運び入れた。 
眠り続ける2人が起きる頃には、彼らを見知っていたルキアが彼らの名前を仲間へ伝えていた。 
2日後、男達は目を覚ました。 
人払いをしてから枕元に座ったマテライトは、まず名乗った。 
 
「わしはマテライトじゃ。カーナの重装兵団の団長じゃった。こっちのジジイはセンダックじゃ」 
「自分はマハール王国騎士団隊長のタイチョーでアリマス。こっちは腹心のグンソーでアリマス」 
 
ベッドから上半身を起こし、沈んだ声で彼は言った。 
少し躊躇いながら、センダックがタイチョーに向けて言う。 
 
「タイチョーさん、マハールは最後まで戦ったと聞きました」 
「そうでアリマス…。自分以外は皆立派に戦ったでアリマス…それなのに自分は逃げたのでアリマス…」 
「違うでアリマス。自分がタイチョー殿をお連れして」 
「結果は同じでアリマス!自分は」 
「そんな経緯はどうでもいいのじゃ!!」 
 
涙声の言葉をダミ声が遮った。 
呆気に取られた男2人にお構い無く、ダミ声はきっぱりと言い放った。 
 
「グチグチなんざ聞きたくもないのじゃ!反乱軍として参加する意志があるのかどうかだけでいいのじゃ!」 
 
口を開けたままベッドの上の男がマテライトを見る。 
マテライトの横ではセンダックが頭を抱えるようにして目を閉じていた。 
 
「さ…参加するのでアリマス!!打倒レスタットでアリマス!!」 
「ならばこれからワシらは同胞じゃ!!さっさと疲れを取ってワシの練習相手をするのじゃ!」 
「了解でアリマス!!」 
 
身を翻してずかずかと足音を立てつつ小屋を出ていったマテライトを、追おうとベッドから足を降ろそうとした男はき 
マテライトと入れ違いに入って来たゾラに止められた。 
 
「怪我人はまず治すのが仕事だよ!」 
 
反論を許さない口調で彼女が言い放つと、男は潔くベッドへ横になった。 
センダックがそれを見て部屋を出、入れ違いにルキアがそっと入った。 
まだ熱のある男の額に濡れたタオルを置いたゾラが家事の切り回しをするため立ち去ると、男の横の椅子にルキアが座る。 
 
「タイチョーさん、お久しぶりです」 
「…?」 
 
記憶を辿るようにじっと男がルキアを見て、首を傾げる。 
男の奥のベッドで上半身を起こしている巨体-よく見ると小さな垂れた目で、どこかぼんやりした印象を受ける-があっと声を上げた。 
 
「ライトアーマーの…」 
「ルキアです」 
「お…おぉ、騎士団試験にいらっしゃってたルキア殿でアリマスか」 
「はい」 
「同郷の同志がいるとは…心強いでアリマス」 
「マハールにはまだ私の友人も少し残っています」 
「そうでアリマスか…」 
 
そのまま黙りこんで天井を見上げた男の目から、涙が溢れた。 
 
「タイチョーさん」 
「不甲斐ないでアリマス…」 
「タイチョー殿、今は休むでアリマス。鎧を脱いでいられるのも今のうちでアリマス」 
 
ピシャリと言い切ったグンソーの目も潤みかかっていた。 
 
 
 
二日後、回復した髭面男の姿を、孤島テードの薪割り場で見ることが出来る。 
片手で握った大きな斧を、青々と広がる空へ向けて何度も振り上げる。 
振るたびに汗が飛び散り、必死の形相となっている。 
その隣の芝生には、寝転ぶ男が二人いた。 
正確には、倒れている、だが。 
 
「だらしないのじゃ!」 
 
ダミ声が響いた。 
ぶううん、ぶううんという重低音も先ほどからずっと鳴っている。 
 
「これしきで倒れていては話にならんのじゃ!」 
 
そう言って唯一元気そうな男-マテライトは、髭面男に休むよう指示を与えてから、陽の沈みが早くなった空へ向けて斧を振り上げた。 
彼は浅黒く筋肉質で、遠くから見れば厳しい顔をしたオッサンがそこそこ鍛え上げた身体を持っているようにしか見えない。 
しかし近寄ると、その長身と分厚い筋肉に圧倒される。 
男にしては低いタイチョーと並べば、頭一つ分とまでは行かないものの、その巨体は目立つ。 
今は横で寝そべっているグンソーはマテライトよりさらに高いようだったが、筋肉量で言えば比べ物にならない。 
 
「ふんっ!ぬうっ!」 
 
掛け声とともに斧が空間を引き裂く音がする。 
まっすぐ前を見据えるマテライトの横顔を見上げてから、タイチョーは自分の手に視線を落とした。 
その手に何を見ているのか、ちらりと見ただけのマテライトには想像もつかない。 
それなのに、マテライトはそこに己の弱さを見た気がした。 
 
 
 
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 
 
 
                  《Side Zora》 
「タイチョーさん、大丈夫かねぇ」 
 
夜もふけゆく時間に、まだ起きている二人がテラスに置かれたテーブルで向かいあっていた。 
 
「男の意地ってのかい?アタシにはわからないけど…胸の内に溜め込んでてもいいことないのにねぇ」 
 
そういいながら、恰幅のいい女性はテーブルに置かれた二つの空いたグラスに、とぷとぷとワインを注いで相手に差し出した。 
彼女がこの島へ来てからまだ半年と経っていない。 
しかし、彼女はここに集うものたちの母親のような存在になっている。 
彼女の向かいに座った白髪の初老の老人は、ワイングラスを揺らして中のワインをくるくる回す。 
 
「たぶん…それでも前に進もうとしてるし…時が、解決してくれるんじゃないかと…ワシは思う」 
「なるほどねぇ…。そういえば、だけど」 
「?」 
「ビュウ達は大丈夫かねぇ。若い子達ばかりで心配だよ」 
 
ああ、と頷きながら、老人はほんわかと笑みをこぼした。 
 
「そりゃあ、ラッシュくんたちだけだと心配だけどね。ビュウがいるから…」 
「あの子…」 
「ん?」 
「あの子ね。一番心配だよ」 
「そうかな」 
「あたしはあの子を小さい頃から見てるわけじゃないけど、あの子まだ17とかそこらでしょう? 
 ずっと大人の世界にいたんだろうなぁって思う捻れ方してるよ」 
「捻れてる?ビュウが?」 
「思い過ごしならいいけどね、みんなあの子を年相応に扱ったことないんじゃないかねぇ。背伸びともちょっと違うし、 
 つまらなさそうな…何て言うんだろうねぇ。目がねぇ。意志を押し殺しているわけでもなく、意志を持たないって言うほうが近いかねぇ」 
「そんなこと…」 
「そうかい?近くにいた人がそういうなら、あたしの気のせいだろうねぇ」 
「…」 
「確かにドラゴンと一緒のときはイキイキしてたね、そういえば」 
 
やっぱりあたしの気のせいだね、と彼女は笑った。 
老人はぎこちなく笑って、そして夜空を見上げた。 
星が瞬き、そして流れた。
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