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刺すような光と同時に聞こえた爆音で飛び起きた。
心臓が早鐘を打っている。



不意討ちだ、こんなの。



またいつ光って、あの音が聞こえてくるんだろう。
そう思うと緊張して眠れない。
窓に背を向けていると言うのに、瞼の向こうから光が突き刺さる。
その度に心臓の音が大きくなる。




雷は嫌いじゃなかった。
今もそう思う。
でも怖い。
今はそう思う。


目を閉じても意味がないと、人を馬鹿にしたような光が突き抜ける。
耳を塞いでも意味がないと、人を嘲笑したような音が駆け抜ける。


頭を抱えた。
体を丸めた。

そんなことをしても変わるはずもなくて。

どうでもいいことが頭をよぎる。
そして唐突に寒い部屋だと思った。
誰もいない部屋がとても寂しく思えた。



「寂しかったら僕を呼べよ、黒男」



そう言った男を思い出す。
もちろん一度も呼び出したことはない。
きっと今日も呼ばないだろう。


カミナリが落ちる度に体に激痛が走る。
ちぎられた体と永遠に会えない人を思う心が痛む。




「───」



口から名前がこぼれた。
呼べ、と言った彼の名前を呼んだ。
思わず呼んでいた。
爆音にかき消された。























「何でもっと早く呼ばないかなぁ。ほら見てくれよ、こんなに濡れちまった」

「───?」

「うん?どうした黒男」

「何で…」

「だって今日はカミナリだろう?」

「…?」

「神さまが、黒男のとこへ行けって僕に言うんだ。もちろん僕もそう思ったから来たんだ」

「かみ…さ…ま?」

「そうだよ。黒男が僕を待ってるって言うんだ」

「呼ぶの…遅いって…」

「うん。黒男が呼んでくれるのを待っていたんだ。この僕が待ったんだぜ、黒男。君のために。
 ほら黒男、もっとそっちへお行きよ。僕が布団に入れないじゃないか。
 あぁ、狭そうだなぁ。今度大きい布団を買おう。大丈夫、僕がプレゼントするよ。
 あぁ、でも黒男とこうやってくっついているのもこれはこれでいいね。
 あれ…手足が冷たいね。もしかして寒いのかい?
 大体僕を呼ぶのが遅いからこうなるんだよ。ほら、貸して」

「…あぁ、…これは夢だ…」

「ん?やだなぁ黒男。寝ぼけてるのかい?」

「ほら…夢だ…」

「何でだい?」

「だって…君はここにいるはずがないから…」

「だから、神さまが呼んだから来たんだよ。まぁ、夢でもいいけどね。」

「早く…寝ないと…おやすみ……───…」

「うん。おやすみ、黒男。…僕の神さま」







朝が来て、目を開けた。
夢を見たような気がする。

「ピノコ、嵐はどうだ?」

「あらち?そんなの来てないのよさ」

「え…?あ、あぁ、すまない」

「あらちの夢見たの?」

「…いや。何でもないんだ」

「ふーん。あ、ご飯出来てるのよさ」

「すぐ行く」





窓の向こうの空には嵐どころか雲一つ無い。

「俺が勝手に見た夢か?…間久部」

つぶやいた空は今日も青い。
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