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絞めつけが欲しいと思った。
別に首輪でもロープでも何でもいい。
この首を絞めてくれるものが欲しくなった。
裸の男の背中に言った。

「このまま…」

絞め殺して欲しい。
声は途中から掠れ、最後まで出なかった。

「ん?」

ベッド脇に座っていた男が振り返り、背中ではなく顔を見せる。

「何か…縛るものを…」

床に散らばっている、つけているところを見たことが無いネクタイでもいい。
構わない。

「?」

あぁ、でも。
最期に欲を言わせて欲しい。
今まで何もねだらなかったのだから、最期くらい聞いて欲しい。

「指…」

どうかお前のその指で。
私の本気に気づく前に。
できれば心地よい今のうち。

「指?」

彼の指が頬に触れた。
さらりと頬を撫でられた。
心地が良くて目を閉じた。




































気づくと私は生きていた。
朝の珈琲の匂いがする中生きていた。
私の最初で最後の願いだったというのに。

起き上がり、鏡を見る。
首の周りに指の跡も、ロープの跡も付いていない。
唇の跡だけがついている。
首に触れようとしてふと気づく。

「…?」

首元にある自分の手に何かがあった。
指、に。
銀色のものがあった。
正視することは出来なかったので、ただ鏡の向こうをじっと見る。

私の指を絞める気らしい。




























「指ではなく…首を絞めて欲しかったのだが」

「今度首輪でも買ってやるからしばらくそれで我慢しろ」

私はその時を待っている。
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