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派手な光で照らされた夜の町に彼は立っていた。
部活が忙しいから、もう来れないと塾長に伝えた帰りに見た風景だ。

最初は見間違えかと思った。
いつもの女装と余りにも雰囲気が違ったからだ。
軽くウェーブがかかった短髪のカツラは普段つけていないし、露出度が高いのは
いつものことだけど、今日のは何か違う。

(女装じゃなくて変装…ですかね)

もしかすると彼によく似た別人かも知れない。
…だとしたら自分が目を離せないのはおかしいし、何より目があった瞬間に見せた動揺。

(やっぱり本人…ですよね)

派手な光から顔を隠すように、彼はこちらに背を向けた。

肩を出した服。
普段より少し長いくらいの髪。
短い裾から覗く腰。
ゴツイ腰。
筋肉の引き締まりが服越しでもわかる尻。

(こんなところで何をしているのでしょう)

普段は横目に通り過ぎるネオン街に踏み入れようとした途端、彼の前の扉が開き、男が出てきた。
そして彼の腰に腕を回し、共に歩き始めた。

段々と遠ざかる姿がやがて見えなくなったとき、耳にネオン街の喧騒が戻って来た。
途端に、自分がこの場にいることが恥ずかしくなり、
かろうじて彼が立っていたあたりの電光掲示板に書かれている文字を
目の端に捉えてから、逃げるように歩き出した。

(何故…?)

「デートクラブ」のような文字が見えた。
しかし、彼と歩いて行ったのは男性だった。

(男と?)

胃から何かが這い上がってくるような不快感が突如として襲ってきた。
耐え切れず、ビルの隙間に入って嘔吐する。
苦い白い液状の物が溢れて道端にバタバタと落ちた。
少し靴に飛び散るが、どうしようも無いほど後から後からこみ上げて来る。

(猿野君?)

彼の驚いた顔を思い出した。
その表情は、何故か拒否されたように思えた。
彼の腰に手を回した男の腕を思い出した。
その仕草が、ただの友達では無いように思えた。

また何かがこみ上げてきた。
胃が空っぽになっても後から後からこみ上げて来て、もう駄目かもしれないと
ふと思ってしまった。

気づいたら涙まで溢れていた。
明日、どうやって彼を見よう。
何と言おう。
いや、触れない方がいいのかもしれない。
どうすればいいかわからない。



彼の驚いた、泣きそうな表情が焼きついて離れない。
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