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玄関での、喧嘩にもならぬ噛み合わない言い合いはそう長くは続かなかった。
業を煮やした啓介が、ずかずかと上がり込み、彼の兄の名を呼ぶ。
たった数歩で玄関から居間へたどり着ける小さな家の小さな居間は、男3人が集まるととたんにむさ苦しくなった。
 
(涼介さんほど綺麗な人でも男3人となるとむさく感じるもんだなぁ・・・不思議だ)
 
拓海は啓介から受け取った茶碗に3回目の飯を盛る。
涼介は揚げ出し豆腐を摘みながらゆっくりと茶を飲んでいた。
 
「つまり、兄貴も藤原が好きってことか!?」
「そうだな」
 
茶碗を渡された啓介は礼を言うと同時に揚げ出し豆腐を口の中に運ぶ。
散らかしたり、汚い食べ方ではないのだが、豪快だ。
 
「オレ、ちゃんと言ったはずだよな?」
「そうだな」
「じゃあなんで藤原に告白なんてしてんだよ!」
「ただ告白しただけだ。まぁ・・・乗り換えてくれないかなとも思ってるが、まだ返事はもらってないな」
「返事だと!?おい、藤原!」
「はい?」
「兄貴にその・・・何ていう予定なんだよ!今はオレと付き合っ・・・てんだろ?」
「随分消極的な態度だな、啓介」
「うっせ!どうなんだよ、藤原!」
「どうって言われても・・・一応啓介さんの告白は受け入れたつもり・・・ですし・・・涼介さんにすぐ乗り換えるとかそういう予定は今のところないですよ」
「それは残念」
「今のところってナンダヨ・・・。藤原、お前」
「ちょっと待ってくださいよ、啓介さん。もう夜ですし、少し落ち着いてくださいよ。うち狭いですし・・・正直うるさいっす」
「お、お前・・・」
「それに言ったでしょ?オレ付き合うとかまだよくわかんないって。無理だなって思ったらちゃんと別れたいって言いますから」
 
安心してください、と拓海が続けたのを聞いて、啓介は開いた口が塞がらない。
その向かいで茶をすすっていた涼介は、湯呑みから口を離して横を向き肩を震わせている。
 
「お前・・・」
「なんか変なこと言いました・・・?てか今はプロDのことしか頭にないですから・・・まぁ啓介さんならそれでもいいかなと思ったんですが」
「どういう意味だよ」
「だから・・・オレがプロDのことで頭いっぱいでも会える・・・とか・・・」
「お・・・おう・・・」
 
なんだ結構考えてんじゃん・・・と啓介が密かに嬉しさを噛み締める横から、
 
「オレも同じ条件だな。まぁ・・・藤原が乗り換えてくれるよう、せいぜい頑張るとしよう」
 
と啓介の心に冷水をぶちまけて涼介は、腰をあげた。
 
「もう遅いからお暇するよ。またDで、な」
「あ、はい。お口にあいましたか?」
 
いそいそと涼介を送りに玄関へ向かった拓海が、アレ、と振り返る。
そこに誰もいないのを見て、居間に入る啓介へ聞こえるように
 
「啓介さんは帰らないんですか」
「おま・・・っ!」
「ぷっ」
「?」
 
涼介は笑いながら手を振り、玄関を出て行った。
それを見送ると、後ろからずかずかと足音が聞こえてくる。
 
「あれ、帰るんですか?」
「帰るよ!なんかいちゃあ悪いみたいだしよ」
「今日オヤジいないですよ」
「あっそ。・・・え?」
「じゃ、寝ます。最近10時には眠くて」
「お・・・おう」
「啓介さんて」
「うん?」
「Dのときのほうが凛々しくてカッコイイと思いますよ」
「そりゃお前・・・どういう意味だよ」
「だから、まぁ・・・運転してる姿が好きってことじゃないですか?たぶん」
「そうか」
「ええ」
「じゃあ今度ドライブでもするか?」
「ムリっす。仕事始めたばかりで覚えることだらけですし。Dで会えるんでいいじゃないですか」
「あっ・・・そ・・・」
「じゃ、気をつけて帰ってくださいね。遅いのであんまり音」
「わかってるよ。悪かったな」
 
玄関の扉を開けて振り返った啓介に、拓海が一歩踏み出す。
一瞬で離れ、じゃ、という拓海の別れの言葉とともに扉が閉められた。
カチッと鍵をかける音がしてからハッとした啓介が唇を押さえ、踵を返す。
 
「いまどきこんなんで心臓爆発しそうとか・・・小学生でもねーよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
残った揚げ出し豆腐(一切れしかない)をおかずに、飯を食べる。
啓介さんのどこにあんなに入ってるのかと不思議に思う。
確かに自分よりはがっしりしている印象があるが、着やせでもしているのだろうか。
 
(さっさと終わらせて寝てえなぁ・・・。もう風呂も明日でいいや)
 
急激な眠気に襲われる。
食器を流しにおいて、もそもそと服を脱ぎ洗濯機へと放り入れる。
下着だけの姿でのそのそと2階へと上がると、そのままベッドへ突っ伏した。
 
(茨城は涼しくなってるんだろうな・・・。今走ってたらきっと城島さんには勝てなかった)
 
シーツの皺を指でなぞる。
なぞった先に枕があって、皺はそこで消えていた。
 
(ワンハンドステアもまだ違和感が多い・・・)
 
ステアリングを握るように、右手に力を入れる。
想像の中でも握っているかのような質感を手のひらが捉えた。
 
(早くハチロクに乗りてぇな・・・)
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