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蛇のように伝う血を呆然と見ていたかと思うと、不意にユリウスの小指に自らのそれを絡ませてきた。
驚いて顔を上げると、そこには大輪の花のように鮮やかな笑顔を咲かせたセリスがいた。
「見て」
軽く目の高さまで絡まった小指を引き上げて言った。
「こうしていると、赤い糸で繋がってるみたいだ」
「そんな可愛らしいもので繋がっているようには思えんが?」
あまりに嬉しそうなその様に多少の反抗を試みる。
だが兄は困ったように笑っただけだった。
「どちらかと言えば血だろう」
結ばれた指から互いの血が混じって区別が付かなくなる。
こうして見ていると違いなどわからないただの赤い液体にしか思えない。
「うん…なら、約束かもしれない」
ゆっくりと噛みしめるように呟く兄の瞳は穏やかだ。
「指切りだ、ユリウス。知っているかい?」
それくらい知っている、と答えようとしてその眼差しの色の深さに黙した。
「私は君とひとつの約束も交わさないと、約束しよう」
思わず口を開きかけた瞬間に小指の温もりはさっと空気に溶けた。
「指切った」
呆然と解けた小指を見ていると少し楽しそうな兄の声。
随分と強引な様に文句を零すと
「だって、約束なんていらないでしょ?」
と、淋しそうに笑う。
 
赤い糸とやらでも
血でも
約束ですら
繋がっていない小指
の冷たさを振り払うように
小さく拳を握りしめた
 
 
(彼との間に確かなモノなど何もないのに)
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