【Gypsophila】

「どうせ作るんだからね、白にこだわらなくていいと思うんだ」
「あるものから選ぶんでなくて、作るんすか？」
「もちろんだよ」
　猿野くんは、何色が好き？いや、形によって色も雰囲気が違うよね、やっぱり形からかな。
　そう宣う先輩の左手の下に、本が積まれている。
　高さ15cmに満たない程度なのだがやたら重かった。
　全ページカラー写真だからと聞いたはいいけどなるほどわからん。
「どれがいいと思う？」
　だから見せられても正直どれも似たり寄ったりというか、正直同じにしか見えんのですよ。
「君が着るんだからね、ちゃんと選ばないと」
「いやーそうは言ってもよくわからねーんでお任せじゃダメっすか」
「しょうがないなあ。やっぱりこういうのは女性に聞く方がいいのかな」
「もういいじゃないっすか何でも」
「そうはいかないよ。晴れ舞台の服になるんだよ？」
「いやー晴れの舞台になるかどうかはわかんねーっていうか」
　なるに決まってるじゃないか、その後なにかがあったとしても、きっと思い返せばすごく幸せな瞬間だよ、と笑顔が眩しい先輩が言う。
「どうだろう、女性に聞いてみるのは」
「じゃーあー★明美が選ぶワ！」
　適当に選んだ本の適当なページを開いて、もう一冊同じように開いて、もう一冊中略で、ざっと眺めてから、
「これで！」
　ビシリと指したモデルを覗き込んだ先輩が、なるほどと頷いた。
「やっぱり、うん。シンプルが一番だね」
「そうよね～～～！」
　正直何がスタンダードなのかわかんねーけど選んだものはシンプルだそうだ。
　はぁ、これで面倒そうな服選びから開放される。
　そう思ったんだけども。
「じゃあ次は素材だね」
「えぇ・・・マジっすか・・・」
　
　
　
　
「猿野、さっき牛尾と何を決めてたのだ？」
　化粧落としを取りに行こうと部室に行く途中、ほっぺ先輩に呼び止められてそんなことを聞かれた。
　隣には猪里先輩もいるから、小さい先輩Sだ。
「来年から新しいユニフォームにするって、先輩がやる気満々で」
「ほらやっぱり言った通りなのだ。猪里は気にしすぎなのだ」
「よかったばい。明美ちゃんなら何でも似合うたい」
「んもー★先輩ったらん❤」
　
　
　
　
「ところで猪里」
「？」
「予想はついてるからあんまり聞きたくないけど、一応聞いておくのだ。さっき何を考えていたのだ？」
「明美ちゃんが似合うウエディングドレスはどんなのか考えてましたばい」
「うん、やっぱり聞かなければ良かったのだ」