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「ドラッグって響きがいけないと思うんです」
トゥルースがそう言ったのは唐突とも言えるタイミングだったので、ラッシュは反応できずトゥルースの顔を見るだけだった。
ビッケバッケは口の中に詰め込んでいた握り飯を飲み込んでから、
「キノコから作った危ない薬もドラッグっていうもんね」
と返す。
それを聞いてようやく合点がいったのか、ラッシュはああ、と頷いた。
「最近噂になってるやつだろ?見たこと無いけど」
「…」
トゥルースがチラリとビッケバッケを見て、すぐに視線を戻す。手に持ったキノコを眺めながら誰にともなく呟いた。
「結構高いドラッグみたいですよ」
「ふーん」
「そのままキノコを食べてもいいんだけどね。毒があるから」
「まあ、そうだよな。てかそんなのいつ使うんだ?」
「そりゃあ、惚れ薬的なものだからそう言う用途だよね」
「あ、惚れ薬なのか」
「も、あるよ」
色々あるのか、と変なところに感心したラッシュがうんうんと頷いている。
トゥルースは少し考えるしぐさをして、それを見たビッケバッケはふと思ったことを尋ねた。
「なんでそんなこと思ったの?トゥルース」
「ああ、それが」
ごそごそと懐から取り出した革の袋の口を縛る紐をほどく。中から出てきたのは紫色の小さな粒だった。
「なんだそれ」
「件の惚れ薬です」
「は?」
「商人のおじさんにハイドラッグを頼んだら…なんか聞き間違えたみたいで」
「…なるほどな」
じゃあそれはいらないのか?と尋ねたラッシュをじろりと睨んで、トゥルースはまた懐に薬をしまいこんだ。
「これはおじさんに返すんです」
「ちぇ」
プリプリしだしたトゥルースを横目に、ビッケバッケは晩御飯の大鍋に刻み終えた野菜を入れた。トゥルースも握っていたキノコを千切りながら入れている。
ラッシュは大きなしゃもじで鍋をかき回し、これまでずっと無言で会話を聞いていた彼らの隊長は、自分の体が隠れるくらいに積まれた肉や野菜を笊に乗せて鍋へと流し込んでいた。
「ビュウはそのドラッグ使ったことあるか?」
「――誰かに使ったことはないよ」
そう言うと、今度は米を炊く準備を始める。
「そうだよなあ!ビュウは飲ませる相手なんていなさそうだもんなあ!」
儚げな、泣きそうな、いやともすれば一瞬で怒り出しそうな顔をした隊長を見たトゥルースが、慌ててラッシュに水汲みを願う。
「これに汲むんでいいのか?」
「ええ。よろしくお願いします」
「おう」
たらいを持ったラッシュが少し先の川原へ歩いて行った。ため息をついたトゥルースに、米を持って脇に立ったビュウが苦笑した。
「そんなに気を使わなくても大丈夫だよ、トゥルース。でもありがとう」
「あの、いえ…はい」
「トゥルースは気にしすぎなんだよう」
ビッケバッケはもう少し気にした方がいいんじゃないかとトゥルースは思った。そんな心配をよそに、のほほんとした口調でビッケバッケが
「アニキは今まで何回盛られたの?」
と聞き、それに対して彼らの隊長がさらりと
「覚えている限りで8回かな」
と答えたのを聞いて、トゥルースの顔から血の気が引いた。
「すごいねえ」
「ああ」
淡々とほのぼのと交わされる会話に、トゥルースの手は止まったまま動かない。
「本当、ドラッグが売り出される前にアニキに耐性ついてて良かったよね」
「でもまさかここまで酷いとは思わなかった」
最終的には笑いだした二人を見てトゥルースは、その自慢の思考力を完全に停止させた。
ビュウもビッケバッケも意外と腹黒いのかもしれない――そんな疑惑を密かに抱いて。
「でもなんでアニキはあのドラッグ飲んだの?」
「ドラゴンの餌にするにはどんなもんかと思って」
「それでドラゴン達と一緒に試作品を食べてくれたんだね」
「ああ」
「いやそもそもビッケバッケがそんな薬を作り出さなければ」
口を挟んだトゥルースを、ビッケバッケとビュウが会話を止めて凝視する。
そしてばつが悪そうに視線を逸らして苦笑いをするビュウと、噴出して笑い転げるビッケバッケに、トゥルースはまた呆気にとられた。
「え?」
「すまない、トゥルース」
「え?」
「あれの発案者ボクじゃないよ」
「え?」
「すまない」
「え?」
大きな鍋がぐらつかないように組まれた竈に、ビッケバッケが笑いながら薪を放り込んだ。
ビュウが鍋に米を入れたところで、ラッシュが戻ってくる。
「この水何処に置けばいいんだあ?」
「こっちへ頼む」
「じゃあボク炊くね」
「んじゃ俺は魚捌いてくる」
「……え?」
「トゥルースはアニキに夢を見すぎだよう」
「ありがたいけど、ちょっと恥ずかしいな」
「ん?なんだ?トゥルースが夢見がちだって?」
「違うよう」
談笑する3人を傍目に、トゥルースはしばらく動くことができなかった。
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