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 突然そんなものが欲しいと言われたので、キリランシェロは眉を寄せて唇を尖らせた。
「そんなの、あるわけないだろ」
 キリランシェロの肩を揺さぶる赤毛の少年は、当然のように食い下がらない。
「先生なら持ってるかもしれないじゃないか。キリランシェロ、ちょっと聞いてみてくれよ」
「やだよそんなの」
 赤毛の少年―――キリランシェロの親友と言い張る―――ハーティアは、顔の前で両手を合わせた。
 だがキリランシェロはそれを見てもピクリとも表情を変えなかった。
「持ってる持ってない以前に、動機が不純だろ」
「そんなぁ」
「大体なんだよ、惚れ薬って」
「なんだキリランシェロ、知らないのか?惚れ薬っていうのは、誰だろうとその薬を飲ませればたちまちに」
「違うよそういう意味じゃないって!・・・僕、絶対に聞いたりしないからね、諦めてよ」
 しつこく食い下がろうとする親友を振り切って、キリランシェロは歩を進めた。
 廊下を走らない程度に足早に、けれども待つつもりは全くないことがわかる速さで自室へ向かう。
 ―――大体なんだよ惚れ薬って。竜の牙とか普通持ってるようなものじゃないだろ!
 そもそも間近で見たこともないから本当に牙があるのかどうかさえ怪しい。
 伝承や絵を見る限りではあるみたいだけれど。
「女性に振られてばかりだからって、振られないくらい好きになってくれる薬を使おうなんて」
 ―――僕なんてまだ女の子と付き合ったことさえないのに
 ちらりと窓ガラスに映った自分の顔が見えた。
 明らかに不機嫌な顔をしていて、なおさらに幼く見える。
 ハーティアにはかわいいと言われる顔だが、内心複雑だ。
 今部屋に戻ったらハーティアに怪しげな薬を作る手伝いをさせられそうだ―――そう思い、なんとはなしに行き先を変えた。
 教室に行って姉たちに捕まるのも、と思案しながらふと窓を見た。
 沈もうとしている角度の太陽は、目を細めても光の量が多くて目が少し痛くなる。
 少し視線をそらして、太陽の光に染まる空を見た。
 もし惚れ薬なんてものが出来たら一体誰に使うんだろう。
 ぼんやりとそんなことや今日の晩御飯のことや姉が話題にしていた髪型のことを考える。
 さすがに清楚そうに見える三つ編みはアザリーには似合わないよ―――と言う勇気はなかったけれど。
 時間にして15分は経ったのだろうか。
 太陽が沈みきった空はまだ赤く燃えているが、もっと上へと視線をずらせばすっかり夜の色だ。
 小さく息を吐いた。
「―――キリランシェロ」
「えっ、あ、はい!」
「どうした」
「いやえっと・・・大したことじゃないです」
「そうか。気をつけろ」
「はい」
「ところで」
「はい?」
「さっきハーティアが竜の牙を持っていないかと言っていたが、お前も必要なのか?」
 ―――結局自分で行動に移したのかハーティアは・・・!
 余りにも驚いたせいか―――これは後から聞いたのだが―――随分と間の抜けた顔をしたらしい。
 目の前にいる教師の片眉がぴくりと動いた。
「―――キリランシェロ?」
「なんでそんなの持っ・・・いや、アイツ何に使うか言ってましたか?」
「いや、聞いていないが」
 いつも完璧なくせになんで肝心なところを聞いていないんだ―――!
「あれは扱いが難しい。何を作るにしても」
 そのとき、大きな音が響いた。
 塔の中から聞こえたので、襲撃といった物騒な話ではないのは明らかだが。
「先生、今の」
「気にするな」
「えっ、でも何か」
「ハーティアの部屋からだ」
「・・・えっと」
「大方調合に失敗しただけだろう。あの程度なら死にはしない」
「あの・・・でも同室僕で・・・荷物とか」
「私の部屋に泊まればいい」
 ―――もしかしてここまで読んで渡したのだろうか。
 そんなことはないと思いたいが、この教師に限って何も考えていないということはありえないだろう。
 後でハーティアに何かおごってもらわないと割りにあわない気がする。
 キリランシェロは若干引きつった表情で、宜しくお願いしますと小さく返事をした。
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