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最近、あの怪しいオッサンがなんで必死なのかわかった気がする。
力もあって俺よりずっと大人だけど、
この小さい烏森を思う気持ちは
城にずっと閉じ込めておかなければならない気持ちは
俺と一緒かそれ以上なんだろうなって。
なんとなく思っていたけれど、その理由がわかった気がする。
 
 
 
名前を呼んでくれる人もいないってどんな感じなんだろ。
俺はいつも1人じゃないのに1人で突っ走って、時音を泣かせて、
散々後悔したりしたけど。
本当の1人ってなんなんだろう。
 
 
 
「おい、良守」
「んぁ?」
「これはなんじゃ」
「そりゃ虫だよ虫。芋虫」
「気持ち悪い形じゃのう」
「でもそのうち蝶だとか蛾になるぜ」
「変なことを言うのじゃな、良守。このような形のものがあんな綺麗なものになるわけなかろう」
「見たことないのか?いや俺も実際に目の前で見たことがあるわけじゃねぇけど。さなぎになって蝶になるんだぜ」
「さなぎは知っておる!本当にこれがさなぎになるのか?」
「うんまぁ」
「おぉ…見てみたいのぅ」
「あー。今度本屋にでも行って写真載ってるヤツ買って来てやるよ」
「写真?なんだそれは」
「えっとその」
 
 
 
無邪気だなぁ。
ずっと1人。ずっと子どものまま。
そんなの寂しいだろうにさ。
俺と一緒にいて少しは楽しんでくれてるのがわかる。
だからいつかまた離れるのがつらいな。
 
 
 
「…あ」
 
 
 
そっか。
俺が遊びに行けばいいんじゃん。
なんだ、名前なんて俺が呼べばいいんじゃないか。
簡単なことだ。
 
 
 
「よっし」
「なんだい良守。もうお殿様の移し替えに慣れたのかい」
「あ、いや、それはもう少し」
「別のことを考える余裕があるなんて余裕もいいとこだね、あんた」
「集中します!」
「…」
「むむ…むっ」
「…まぁお殿様はあんたが好きだからね」
「え?」
「だからしっかり守るんだよ」
「お、おぅ!」
 
 
 
「あの子は考えてることがすぐに顔に出ますから」
「そうか…つらい思いをさせてしまうな」
「…」
「そんな彼の気持ちを利用しているようでたまに居たたまれなくなるよ」
「フフ…」
「ん?」
「あの子は自分がやりたいことをやるだけですよ」
「…そうか」
「今宵は星が綺麗です。あの子の修行を観察がてら、いかがです?」
「ん。…今日くらいはいいか。じゃあ、是非」
「はい」
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