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「…何でお前こんなとこでバイトしてんの?」
続けて、夜行ってそんなに貧乏なのか?
と続けられたので、俺はムッとした。
「私用でそっちの金を使うわけにはいかないだろ」
「ふーん」
「まぁ、短期バイトだし」
「てかよく中学モゴッ」
「店先で言うんじゃねぇよ。クビになったらどうすんだ」
俺に口を塞がれたままポカンとした表情で、やっぱし馬鹿顔のままコイツが言う。
「何か買いたいもんあるのか?」
「関係ないだろ」
「…ふーん」
気になるのだろうか。
気になってんだろうな。
「教えないからそんな見んな」
「なっ、見てなんか」
「嘘つけ」
並んで歩きだし、コイツのくるくる変わる表情を横目でチラチラと伺う。
読まなくても、表情で考えていることがまるわかりだ。
来るな、と思った矢先、奴が口を開く。
「…あのさぁ」
「なんだよ」
「その…俺はヤダッて言ったんだけど、父さんがどうしてもとかいうし、その」
「だから何だよ」
「明後日、空いてる?」
「明後日?何だよ、何かあるのか?」
「えぇ…いや、そのさぁ…」
言わなくても知っている。
明後日は誕生日だ。
俺の目の前にいる彼の。
「アァッ!もう来んな!明後日は来んなよ!」
「何だよ、意味わからない奴」
知らない振りをする俺をちらちら伺いながら、少しムスッとした表情をするコイツは
とても同い年とは思えない。
「まぁ、お前の誕生日会ならもうかなり前に聞いたぜ」
「なっ!?」
その場に立ち止まって口をパクパクさせるコイツのアホヅラに似合う物を考えた。
一ヶ月かけて稼いだ給料は明日手に入る。
しばらくしてようやく正気を取り戻したのか、来るなと念を押しながら…叫びながら、
肉食動物に追われた小動物の如く俺から遠ざかって行く。
うん。また明日考えよう。
バイト先でもらったサンドイッチが入った袋を片手に俺は逃げる背中に手を振った。
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