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 彼女は椅子を引き、深く腰掛けた。
 息を吐き出し、肩の力を抜く。
 閉じていた目を開け、デスク右下の棚に手を伸ばした。

 ガチャ カラララ・・・

 鍵を開け、引く。
 殺風景なその棚の中には、ノートが入っていた。

 布製のハードカバー。
 色は赤。
 題名は無い。
 角に金属があしらわれた、そのノートを、彼女は開いた。
 デスクの隅に置かれたペンとインクを引き寄せ。
 彼女は綴り始めた。

























































 大佐は今日も鋼の錬金術師の側から離れませんでした。
 書類は相も変わらず山積みになっています。
 私は見ました。
 大佐の腕が、エドワード君の腰に周り、次の瞬間払い落とされるのを。















 彼女は思わず力を込めていたことに気づいた。
 落ち着けるため、また一度、深呼吸をする。
 そして再びペンを握りなおし、ノートへ向かう。
















 エドワード君は何も無かったように笑います。
 大佐も何も無かったように笑います。
 しかし、エドワード君がいるせいで、いつもよりさらに遅かった仕事が。
 ペンを走らせるその手が。
 止まったのを私は見逃しませんでした。
 仕事に支障が出るのはいただけません。
 困ります、大佐。

 困ります、が。

 今年も新刊に困らないで良さそうです。
 有り難うございます。
 でも仕事はして頂きたいと思うのです。
 仕事に支障を来すくらいでしたら、いっそのこと。
 襲って頂ければ私も実録成人指定本が出せて嬉しいというものです。


















 彼女はまたハタと気づいた。
 ペンを置き、肩を少し解すように動かす。


















 今書いたページをパタパタと仰ぎ、彼女は乾いたことを確認してから、
本を閉じた。
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