忍者ブログ
HPから移転しました。
| Home | Info | 更新履歴 | バハラグ | オーフェン | 頭文字D | FF7 | ミスフル | PAPUWA | ブラックジャック | 結界師 | 鋼錬 | DARK EDGE | FE聖戦 | トルーパー | コナン | ワンパンマン | T&B | クロサギ | 宇宙兄弟 | DP | なろう系 | メダリスト |
[259]  [258]  [257]  [256]  [255]  [254]  [253]  [252]  [251]  [250]  [249

「はい?」
 
彼がいきなりそう呟くからどうしたのかと思った。
金欠なのかと思ったから、自分の財布を覗いた。
 
「・・・何見てんの?」
「え?いや。俺今これだけしか持ち合わせがないんだけど・・・」
 
分厚い財布。
今日のデートのために持ってきたそれ。
それを彼は。
 
「・・・・・・使えねぇな」
「え?マジ?コレじゃ足りネェくらいのところ行くの?え?お泊り?」
 
お泊りならそれはそれで嬉しい。
 
「お前。一般人の金っていうのはなぁ」
 
そう言いながら彼は俺に小銭を見せた。
110円。
そこに乗っている。
財布の中には5円玉と1円玉が数枚。
 
「・・・・?」
 
彼の目の前には自販機。
 
「5円玉くらい使えるようにしろっての・・・・・・・」
「・・・・・」
「で、お前はないの?」
「え?」
「だから、金」
「えっと・・・・」
「マンサツなんてーツカエネェもんだすなよ?」
 
最高峰の札に「ツカエネェ」なんて笑っちゃうけど。
スパッと切り捨てるところがすっごいかっこいいよ?
俺はそう思うよ。
 
 
 
「ハイ」
 
チャラリ。
渡した10円玉に思いを込める。
アナタがかっこいいなぁとか。
やっぱり好きだなぁとか。
そういう思いを込めて渡す。
10円しか価値のない。
けれど今はとても重要な10円玉に想いを込める。
 
「おぉ。ありがとな」
 
アナタはそう言って受け取ったけど。
伝わってるのかな。
伝わってたらいいな。
 
 
 
俺をみてアナタが言う。
 
「好きだよ」
 
驚いて。
ほんと驚いて。
 
 
 
 
 
 
「ケッコー気に入ってるんだよ。コレ」
 
 
 
 
 
 
続いたその言葉にもう涙が込み上げて来た。
あー。
もう泣いちゃうよ?
 
 
 
 
 
 
「オイ。何泣いてんだお前。10円出すのがそんなに嫌なのかよ」
 
そうじゃないって。
そうじゃないってば。
こんなときまであなたはもう。
あぁ。また涙が出てきた。
 
「今度返すから」
「・・・・返さなくてイイ」
「あ?」
「返さなくてイイって」
 
返さないでよ。
頼むから。
そのまま受け取っておいて。
 
「・・・・・・わかったから。泣くなよ、もう」
 
今わかったっていった?
返さないでいてくれるんだ?
・・・・・・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
「何だよ次は急に笑い出してよ。ワッカンネーやつ」
 
伝わらなくてもいいから持っていて。
伝わって欲しいけど。
無理ならせめて持っていて。
 
 
 
 
 
 
「まぁ。要は小さくていいから大事なものだよな」
「へ?」
「ん?」
 
 
 
 
 
 
・・・・・・・案外届いているのかも。
PR
Powered by Ninja Blog Template by CHELLCY / 忍者ブログ / [PR]