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俺は、昔から月を複数見ていた。
『今日は4つめの月だ』
などと言い、母を困らせていたらしい。
昔は空に一つしか見えなかった。
いくつもあったが、空で輝く月は一つしかなかった。
他はいつも見えなくなっていた。
思えば、俺は生まれた瞬間に妖邪界へ逝くことが定められていたのかもしれない。
 
 
 
人間界が嫌いか、と問われた。
俺は応と返した。
では人間が嫌いか、と問われた。
俺は否と返した。
短い会話が終わり、俺は目を閉じた。
開け放ったそこから見える空はいつになく澄んでいる。
そして風は凪いでいた。
何とも柔らかな夜である。
「悪奴弥守」
呼ばれ俺は振り返る。
「お主、人の話を聞いて居らぬな。まだ終わっては居らぬ」
「…もう終わったと思うて居ったのだ。許せ」
外への視線を内へと戻す。
白髪の男は俺を見て言った。
「お主も人間らしくなりおったな」
「…」
俺は眉をしかめこう返す。
「人間界へ行けと申すか」
奴は片方しか見せない目を細らせ笑う。
俺を見たまま声を立てず、唇の端を吊り上げ笑う。
奴は昔も今も相変わらぬ。
「行かぬのか」
「どこへ行けと言うのだ」
「人間界へ」
「好きではない」
「ほお。迦遊羅の命でも行けぬと申すか」
「…迦遊羅殿の?」
小奴が言うのも訝しいが。
何故にあのお方が行けと仰せになるか。
「人間界は好きではない…」
今宵の月々へ俺は小さく呟いた。
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