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 くっつくまで1分くらいはかかると言われたので、眺めていることにした。 
 左足首と左大腿部が同時に繋がったのを見届けてから、右足を探しにいく。膝らしきものを見つけて持ち上げると、瓦礫の中から足が出てきた。
 靴が半分になっていて、そういえば先程半分の靴が落ちていたことを思い出す。中身はないと思って見なかったのだが、この様子だとあったようだ。
「はい、右足」
 切断面を合わせる。細胞が動きじわじわと修復されていく。
「なあ、ハゲマ」
「サイタマ」
「?」
「サイタマだ」
「ヒーローネームで呼ぶのがマナーだろ?」
「知らん」
「・・・まあ俺もどうでもいいんだが」
 足の修復が終わる。そして声のする方を見た。
 ビルの壁が崩れたのであろう瓦礫の上に、腰から上の上半身が置かれている。腕はない。
「胴体をつけてくれりゃあ自分でやれる」
「そうか」
 確か靴の切れ端はあの辺りだったろうか。上半身を跨いで靴を探す。あった。中を覗く。あった。
「着てる服がボロボロになるのは困るよなあ」
「…ああ」
 切れた靴を投げ捨てた。中身をまた繋げる。
「腕探してくる」
「たぶん俺の右の方だ」
「あっちか」
 見つけた。腕が動いている。瓦礫の下からはさすがに抜けないらしい。
 瓦礫を持ち上げた。腕は指の力でずるずると這いずった。とりあえず踏みつけてから捕まえる。
「丁重に扱えよお前。俺の腕だぞ」
「動いて邪魔だった」
 右腕が付くと、男は体を起こした。捕まえて、下半身の上に置く。腹筋が繋がり、足の指が動き、膝が動き、男は立ち上がった。
「帰る」
「え?」
 男の腕を見る。気のせいではなく確かに左腕がない。いや、なかった。今は肘辺りまで生えている。
「左は?」
「千切れて散乱してる。再生の方が早い」
「そうか」
「ああ。助かった」
 服と言うより襤褸を纏っただけのような姿にふと先週買ったまま着ていない服を思い出す。
「なあ」
「?」
「うち寄れよ。服あるし」
「いや、いい」
「いや服を着ろよ」
「慣れている」
「うんまあ、言われてみると俺も慣れてるな」
「…」
 顔色の悪い男が振り返ってこっちを見た。笑っている。
 男は手を振って歩き出した。振った手の手首から先はなかったけれど。
 少し見送ってから俺も帰ることにした。置いておいた買い物袋を持つ。遠くに同居人の姿が見えた。
 待たせすぎて腹を減らしただろうか。文句のひとつも言われるかもしれない。
 そういえば。
「あいつの名前なんつったか」
「え?」
「今そこでヒーロー修復してたんだけど」
「修復ですか」
「そう。見覚えはあるけど名前がわからん」
「どんなやつですか?」
「いや、いい。また会う気がする」
「わかりました」
 名前聞いておけば良かった。また腹がぶっ飛んだら大変だろうな。なんであの体で―
「ヒーローやってんだろな」
「え?」
「いや、なんでもねぇ」
 男が去った方向にはもう夜空が広がっていて、あの足取りならまだそんなに離れていないはずなのに姿はもう見えなかった。
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