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 ワイヤーがビルのガラス窓を割り、何かへ巻きついたのだろう。
 落下中だった彼らが突然中空で止まったので、私は安堵した。
 唯一飛べる私は崩壊しかかっているビルに取り残されていた少年を抱えていて、彼らの元へ駆けつけることが出来なかったから。
 地上にいるスタッフに少年を受け渡し、彼らが吊られたビルを仰ぐ。
 だいぶ高いところに、ワイヤーの発射元である片腕を上げた彼がいた。
 その上にいる彼の相棒は、よく見れば逆さだった。
 足にワイヤーが絡んだのだろうか。彼の相棒の珍しい姿は少しおかしかった。
 これからすべきことは彼らの救出だろう。スタッフに手を振って、私は高度を上げつつ彼らを目指し飛んでいく。
 恐らく相棒と会話をしているのだろう彼はずっと上を見ている。
 と同時にワイヤーの根元を残し緑のボディが落下した。
 落ちて来る彼の声は聞こえず、逆さまの状態から腹筋の力で起き上がりワイヤーを掴んでいた、彼の相棒の叫び声が遅れて聞こえて来た。
「―――さんっ!!」
 そのとき、私の心臓や思考や見ていた景色は止まったように思う。いや、止まったというのだろうか。
 何も考える余裕がなく停止したのかもしれないし、同時に色々な可能性を考えてしまって混乱したのかもしれない。
 私の景色が動き出したのは後頭部に何度も衝撃を受けてからだったし、正直、今になっても何が起きたのか思い出せないのだ。
 スーツを開発したスタッフに怒られたことは覚えているけれど。
「イッテ、痛ェッてオイ!オイこら!スカイハイ!」
 と叫びながら私の後頭部を叩く彼の姿なら覚えている。
 
 後日の彼曰く。
 
 あんときはホント参ったよなあ。
 落ちずに済むと思ったら柱がもたなさそうでさあ。
 何とかなるかなって思って外したけど・・・いやバニーちゃん怒らないでって。
 もう済んだ話だし、まあどうにかなったし、二人して落ちるとかビル倒壊よりマシだろ?
 でもさあ、俺ひとつだけ気になることあるんだけど、聞いてくれる?
 ビル壊した賠償、なんで俺ンところに来たの?
 大体53階を壊したのは犯人だし、いや俺も多少は暴れたけど。
 12階を壊したのはスカイハイだろ?
 俺を助けるためにすんげえスピード出してそのままビルに突っ込んだってェのがなんで俺に来るわけ?
 え?俺が落ちなければ発生しなかったから?
 そりゃねえだろ・・・。
 
 だそうだ。
 さすがに私も何故彼のところへ請求されるのか疑問に思ったので、自分の給料から彼に支払った。
 彼がなんだかむず痒そうな顔をしていたことを覚えている。
 そんなことがあってから半年も経った今日、私は彼と映画を見ている。
 スタッフロールが終わり明るくなった映画館で、彼は私を見てぎょっとした。
「そんなに泣くシーンあったか?」
 私は首を傾げた。
 頬を触って見る。確かに濡れていた。
「なんでだろう。わからない」
 映画を見ながら、最近は忘れていたあの事件を思い出していた。思い出すきっかけとなった出来事が映画の中にあったのかもしれない。
 映画館を出て、カフェを手に歩く彼の横顔を見上げる。彼は私より少し背が高い。
 ん?と私を見返す彼を見て、足を止めた。
 一歩先で止まった彼がそこに存在していることをとても嬉しく思う。それはきっと、
「私は君に恋をし」
「待て!」
 がばりと彼の左手が私の口を塞いだ。きょろきょろと見渡す彼がようやく手を離してくれたので、先を続けようとすると、
「待てって!」
 と再び言われた。
 手を引かれてしばらく歩くと、公園があった。
 ベンチに腰掛ける彼の横にお邪魔すると、咳払いが聞こえた。
「あー、あのさ」
「もう続きを言ってもいいのかい?」
「いや言わなくていいっ。わかったから」
「君を困らせるつもりで言ったんじゃないんだ。・・・あの事件の時のことは全く覚えていなかったけれど」
「事件?」
「君が落ちたとき」
「ん?ん~~?あ、あそこのビルの?」
「そう。さっき、君が落ちたときのことを改めて考えてしまってね」
「映画のせいか?あのー沈むところ」
「そうなのかな。・・・もう、あんな思いは嫌だと思ったんだ」
「俺も正直ちびるかと思ったしもうダメだって一瞬思ったけど、まあ、なんとなかなるかなって」
 笑いながら彼が言う。本当は笑い事ではないのだけれど。
「思い出して・・・そしたら、もう君のことしか考えられなくなってしまったよ」
「・・・うん」
 公園にはかなりの数の子供たちと大人がいた。
 私は普段ブロンズステージには来ないから、こんなに賑やかで屋台まで出ている公園は初めて見る。
 いつかジョンも連れて来たい。
「タイガー君」
「んー?」
 カフェをすすりながら返事をする彼。
 今度はジョンと来たいと話す私。
「また一緒に出かけてくれるだろうか」
「・・・それはデートの誘い?」
 彼を見た。帽子とカフェで顔はよく見えない。照れているなら嬉しいのだけれど。
「そうだね」
「まっすぐだなあ、スカイハイ」
「キース・グッドマンだ」
「じゃあ俺は虎徹な」
「コテツ」
「・・・よろしく、キース」
 私は恐らく浮いたのだろう。慌てた彼がしがみついて止めている。
 お互い笑って、私たちは夕方になるまで公園で過ごした。
 それはとても楽しい一日で、自宅へ帰った私はいつ彼を招くかジョンと相談してしまったのだ。
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