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「なぁ、クラウド」
 
 その呼びかけに、前を歩く彼が振り向いた。
 
「ん?」
 
 彼の瞳が、光を受けて、一瞬青い光を放つ。
 目を細め、眉根を寄せて、光源を疎ましそうに見た彼に。
 
「眩しいねぇ。黄色いねぇ」
 
 昇る陽を見ていた彼が、嫌そうな顔をして。
 
「アンタのは単なる寝不足だろ・・・」
 
 呟いた。
 口を開きかけた俺の言葉の上から更に。
 
「俺のせいじゃないからな」
 
 彼は俺に背を向けた。
 声は大きくなっていた。
 笑い声を堪えることが出来ない俺は。
 彼をますます不機嫌にさせながら、それでもすぐ後ろを歩いた。
 
 
 
 
 
 
 ふと、視線の先が気になった。
 俺はずっと横顔を。
 彼の眩しそうな横顔を。
 眩しくても見るその先を。
 彼の視線の先を追う。
 
 
 
 
 そこに、あの人はいた。
 
 
 
 
 だから彼は。
 眩しいのに。
 それでも。
 朝陽を見ていた。
 
 朝陽の中のその人を見ていた。
 
 もちろん俺は嬉しくない。
 嬉しくないから。
 
「クラウド」
 
 呼びかけた。
 その呼びかけに彼は応えた。
 俺をまた振り返る。
 
 同時に視線を一瞬感じ。
 すぐにそれは感じなくなって。
 
「クラウド」
 
 俺と同じ様に。
 あの人は名前を呼んだ。
 
 彼を呼んだ。
 
 一瞬身を凍らせて。
 彼はゆっくりとその人を振り返る。
 俺でない人を振り返る。
 
 そして朝陽に向かって微笑んだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺と同じ様に呼んだ人。
 俺と同じ想いを持った人。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 でも俺よりずっと
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 愛された人。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 朝陽の中。
 俺を振り返る彼は嫌そうな顔を隠さない。
 
 
 
 朝陽の中。
 あの人を振り返る彼は笑みを隠さない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 それはひかり。
 彼のひかりとなった人。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺は羨ましくてたまらない。
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